長い間、病院などで導入されていたPHSが、2023年3月31日でサービスを終了しました。これまで医療関係の機器との相性を考えて導入していた病院にとっては、大きな影響となるはずです。

本記事ではPHS終了の理由と病院にもたらされる影響、さらにPHSの代替業務用端末の候補として挙げられる無線機・トランシーバー・デジタルコードレス電話機・sXGP・クラウドPBXについて解説します。

とくに医療の現場では、広域の通信距離や医療機器への影響の低さ、誰でも簡単に扱えること、重要な伝達事項をしっかり聞き取れるクリアな音質、そして災害時の強さなどがカギとなるでしょう。こうした点をカバーしているのは、無線機やトランシーバーの強みといえます。

PHSが終了した理由

PHS終了の理由となった背景には、以下の内容が挙げられます。

・携帯やスマートフォンが普及したため
・安全な通信規格が主流になったため

この章では、それぞれにどういった背景があるのかを解説します。

理由1:携帯やスマートフォンが普及したため

PHSは移動体通信の手段として、90年代半ばに高い人気を誇っていました。移動体通信とは、デバイスが常に通信状態がよい基地局につながる通信方法です。PHSが人気の理由としては、今までになかった本体の小ささ、軽さ、安さを備えていたことが挙げられます。

そんなPHSと同じように、人気を博しているものが携帯電話です。PHSよりもあとに開発されたうえに、PHSと似た特徴を持つのにも関わらず、時代が進むにつれて徐々に人気を得ていきました。

その要因は、PHSにはないあらゆる魅力があったからです。実際、当時の携帯電話には折りたたみ式、カメラ付き、格安プランといったPHSにはない魅力がありました。

また、PHSは高い人気を博している反面、通信エリアが狭いといった欠点があります。一方、携帯電話は企業合併や新技術開発を経て、徐々にエリア拡大を実現していきました。

こうした背景から、携帯電話の需要に反比例してPHSの需要は落ちていきます。PHSサービスを展開していた主要会社が徐々にサービスをたたんでいったことが、終了のきっかけになったというわけです。

理由2:安全な通信規格が主流になったため

PHSの代わりに主流になったとはいえ、携帯電話には欠点がありました。電波干渉の問題を引き起こすおそれがあるという点です。

携帯電話に比べ、微弱な電波を利用するPHSにはこうした問題はありません。医療機器への干渉を懸念した病院や介護施設は、人命に関わるトラブルを避けるためPHSの利用を続けていました。

しかし、技術の進歩とともに携帯電話の通信方法も進化していきます。たとえば、4Gや5Gなどです。4Gや5Gといった通信方法は、医療現場で使用しても医療機器に影響を及ぼすことは滅多にありません。

多機能で使い勝手のよいスマートフォンが開発されたことも大きな要因です。病院としても、多機能でリスクの低いスマートフォンの方が効率的と考えるでしょう。こうした背景から病院でもPHSが活用される機会が少なくなりました。

PHSの終了にともなう病院への影響

PHSの需要が低下するなかでも、多くの病院はPHSの利用を続けていました。しかし2023年3月末にPHSサービスは終了したため、病院はPHSの使用を停止しなければいけません。この章では終了したPHSサービスによる、病院への影響について解説します。

構内PHSは引き続き利用できる

PHSサービスが終了しても、構内PHSは引き続き利用できます。構内PHSとは構内にアンテナを設置して通信する方法です。アンテナが飛ばす電波のエリア内であれば、PHSを利用できます。

注意点は、ひとつのアンテナに対して3つの子機しか接続できないという点です。さらに多くの子機を使うためには、アンテナの数を増やすしかありません。現在、PHSに関するサポートを行っている販売店は少ないため、機材が増えるほど管理が大変になります。

また、構内PHSもPHSと同様に、いつサービスを終了するかわかりません。場合によっては、導入後間もなくサービスを終了することもあるでしょう。したがって、構内PHSを導入するのであれば、サービス終了時の対応も考慮しておくことが重要です。

旧スプリアス規格は将来的に使えなくなる

旧スプリアス規格は将来的に使えなくなるおそれがあります。したがって、現在利用しているPHSの規格が旧スプリアス規格の場合、新規格への移行が必要です。

補足として、移行期間は決まっていません。本来は、2022年の11月までに移行する予定でしたが、新型コロナウイルスによるパンデミックの拡大によって、移行期間が延長になりました。

移行は決定事項のため、そう遠くない未来に行われると考えられます。万が一に備えて、総務省のHPにて利用中のPHSの規格を確認してください。もし旧スプリアス規格に該当した場合は、新規格に移行する必要があるでしょう。

PHS端末や基地局の価格が高騰する

PHSサービスが終了すると、PHS端末や基地局の価格が高騰すると考えられます。現在PHSサービスを展開している企業は、サービス需要の低下を理由に、PHSに関する製品の製造を減らしています。

今まではPHS製品に関する需要と供給のバランスが取れていましたが、供給が減れば需要の割合が増え、市場に出回っているPHS関連の製品の価格は高騰するでしょう。

解決策は、新品ではなく中古品を買うことですが、新製品の製造数が減っているため、需要が集中するのは中古市場です。したがって、新品の市場以上に価格が高騰する可能性が高まっています。

以上のことから、PHSサービスが終了するとPHS端末や基地局の価格が高騰するといえます。

音声品質が低下する可能性がある

PHSサービスが終了すると、現在利用している構内PHSの音質が低下する可能性があります。サービス規模の縮小によって、音質改善のための技術向上がストップされるからです。

たとえば、規模が拡大中の人気のサービスの場合、音質を上げるための技術に多くのコストを投資するでしょう。サービスの規模が大きくなるにつれて、音質も上がっていきます。

しかし規模が縮小しているサービスは、音質を保つための技術に多くのコストを費やせません。したがって、徐々に音質が低下していく可能性があります。

仮に音質が低下したとしても聞き取れるのであれば問題ない、という意見を持つ人もいるでしょう。しかし、実際の現場で音声が聞き取りづらいと、業務に支障をきたすかもしれません。とくに人命を扱う医療現場では、正確かつ速やかな情報伝達は重要なポイントです。

業務効率が悪くなる

PHSサービス終了によって業務効率が悪くなることもあります。なぜなら、構内PHSは利便性が低いからです。

構内PHSは通話と25文字程度のメッセージのやり取りしかできません。情報量の多い現場で利用するには、機能が不足しているといえるでしょう。

現在は多機能なスマートフォンが普及しており、カルテへの記録など通信以外の業務もひとつの端末で行えます。したがって、構内PHSを使うメリットはほとんどありません。

なかには、スマートフォンは医療機器に影響を及ぼすのではないかと懸念する人もいるでしょう。しかし4Gや5Gが開発されたため、そうした危険性はほとんどなくなりました。こうした背景からPHSを利用している現場は、相対的に業務効率が悪くなると考えられます。

病院におけるPHSの導入状況と今後

本記事ではここまでPHSサービスの終了について解説してきました。続いてこの章では、現在実際にPHSを導入している病院がどの程度存在するのか解説します。今後の利用予定もあわせて解説するので、ぜひ参考にしてください。

導入状況

結論から述べると、病院のPHS導入に関する2023年現在の情報はありませんでした。したがって、公開されているなかで最新の2021年に調査された情報をもとに解説します。

電波利用推進委員会の調べによると、2021までにPHSを導入している病院は全体の83.9%でした。PHSサービスの終了の2年前とはいえ、多くの病院で導入されていたことがわかります。

補足として、携帯電話やスマートフォンの導入割合は全体の47.8%でした。PHSほどの割合ではありませんが、半分近くの病院が導入しています。

また、電波利用推進委員会は、それぞれの端末と医療機器との距離を設けているかも調べています。その結果、PHSと医療機器との距離を設けている病院は全体の5.5%でした。

一方で、携帯電話やスマートフォンと医療機器との距離を設けている病院は全体の20.4%です。これは、4G・5Gを使用する携帯電話やスマートフォンであっても、医療機器に密着させるなど至近距離で使用した場合には、電波による影響が発生するおそれがあるためと考えられます。

今後の利用予定

電波利用推進委員会は、今後PHSを利用するかどうかについても調査しています。その結果、PHSを今後も継続して利用する予定の病院は、全体の86.3%でした。

なお、別のシステムに乗り換える予定の病院は全体の4.9%、まだ決めていない病院は全体の8.3%です。このデータを見るとPHSから別のシステムへ乗り換える病院は少ないといえます。

しかしこちらのデータも前の節と同様、2021年のデータです。PHSサービスが終了した現在では、PHSの利用予定について意向が変わったという病院も少なくないでしょう。

病院で業務用端末を導入する際の課題

病院で業務用端末を導入する際の課題は以下の4つです。

・導入・運用コスト
・セキュリティ・プライバシー
・通信容量や接続の安定性
・ほかの機器との電波干渉

導入・運用コスト

病院で業務用端末を導入する際は、導入や運用のコストが課題です。コスト管理がうまくいかないと、ほかの予算が圧迫されてしまいます。

業務用端末を導入するには、端末の購入や定期的にかかる利用料などのコストがかかります。これらのコストはPHSでも必要でしたが、高機能な業務用端末の場合は、さらに費用がかかるでしょう。

その場合、従業員全員分の端末を揃えれば、PHSを導入していたときよりも多くの予算を必要とします。解決策は、中古品や前のモデルの端末を購入することが挙げられます。

しかし、コスト削減を追求するあまり粗悪品を購入してしまうと、かえって業務効率の悪化を招きます。コストを抑えつつ、高いパフォーマンスを発揮する業務用端末を導入することが重要です。

セキュリティ・プライバシー

病院で業務用端末を導入する際は、セキュリティやプライバシーも課題です。たとえば、セキュリティをおろそかにしてしまうと、第三者に勝手にシステムに侵入されるおそれがあります。

業務のための設定を変更されるほか、機密情報を傍受されるリスクも考えられます。悪用されると病院の損失につながることもあるでしょう。

またプライバシーに対する意識が甘いと、患者の情報が漏えいするおそれもあります。こちらも、悪意を持った第三者に見られると情報を悪用される危険性が高いです。患者に被害が出ると責任を問われかねません。

こうしたトラブルを未然に回避するためにも、セキュリティやプライバシーを課題として、問題解決に取り組む必要があります。

通信容量や接続の安定性

通信容量や接続の安定性もまた、病院で業務用端末を導入する際の課題として挙げられます。業務効率や従業員の負担に関わるからです。

通信容量は1か月単位で設定されることが多く、ひと月あたりの通信容量が少ないと、少しやり取りをしただけで制限がかかってしまいます。とくに医療現場は高頻度で通信を繰り返すので、制限がかかるタイミングが早いです。制限がかかった状態で業務を行うと、効率が大幅に低下するでしょう。

また、接続の安定性も重要です。接続が安定しないと聞き漏れが多発し、業務に支障をきたすかもしれません。通信が不安定になるたびに聞き直していると、従業員の負担になるでしょう。

このような問題が起こることを想定しつつ、快適な通信ができる端末を導入することが重要です。

ほかの機器との電波干渉

医療機器の不具合に関係するため、ほかの機器との電波干渉も課題のひとつとして挙げられます。多くの医療の現場でPHSが用いられてきたのは、PHSは医療機器に干渉しないとされていたからです。

携帯電話は医療機器のそばで利用すると電波干渉を起こして、医療機器に不具合が発生するおそれがありました。したがって、PHSサービスが終了した現在、新たに導入する端末が電波干渉を起こさないかどうかは、とても重要な問題です。現在のスマートフォンは医療機器のある場所で利用しても電波干渉を起こさないとされています。

PHSに代わる病院の通信手段

PHSに変わる病院の通信手段としては、以下の4つが挙げられます。

・無線機・トランシーバー(インカム)
・デジタルコードレス電話機
・sXGP
・クラウドPBX

通信手段1:無線機・トランシーバー(インカム)

無線機やトランシーバーは、PHSに変わる通信手段として代表的です。主に工事現場や倉庫作業などの広い作業範囲を要する現場などで使われています。

無線機やトランシーバーとPHSは、いくつか違いがあります。そこで続いての節では、無線機やトランシーバー、インカムのメリットやデメリットについて解説します。

メリット

無線機やトランシーバーのメリットは2つあります。1点目は業務効率が上がる点です。無線機やトランシーバーは、一度に多くの人たちに情報を伝えられます。

1対1でしか通信できない場合、複数人に同じ内容を伝えようとしても人数の分だけ通信を行うか、伝言してもらうしか方法はありません。

無線機やトランシーバーのように一度に多くの人たちに情報を伝えられると、1回の通信でやりとりは終了します。本来、複数人への通信に使うはずだった時間を使ってほかの業務を行えるので、業務効率が上がるでしょう。

なお、無線機やトランシーバーの種類によっては、個別通信とグループ通信をボタンひとつで切り替えできるものも多いです。複雑な操作を必要としないので、PHSから乗り換えるハードルも低い通信方法だといえます。

2点目は、災害や緊急時にも有効な通信手段という点です。無線機は自営通信のため、基地局が不要なまま個体同士で通信ができ、通信インフラが不安定な緊急発生時には必要不可欠な存在です。

オフィスでも防災用として導入されることは多いですが、とくに病院や介護施設など救助が必要な人が多い施設であれば、無線機が確保する非常用通信は大きな意味を持つでしょう。

デメリット

無線機やトランシーバーのデメリットは2つあります。ひとつ目は障害物が多いと通信しにくくなる点です。

トランシーバーは、自分と相手との間に壁などの障害物があると電波の通りが悪くなってしまいます。柱や壁、扉の多い場所では通信に支障をきたすことも珍しくありません。

フロアがいくつもある建物も同様です。フロアをまたいで通信を行う際、通信者同士の間に各フロアの床や天井が存在するため、通信が不安定になることもあります。フロアが離れるほど通信の不安定さは増していくでしょう。

解決策として、中継器を使って通信エリアを広げるか、またはIP無線機やWi-Fiトランシーバーを使うという点があります。IP無線機は携帯電話と同じ通信網を使うため、携帯電話がつながる場所なら全国どこでも通信が可能です。

Wi-Fiトランシーバーは自社ネットワーク内(VPN内)にコントローラー機を設置するだけで、既存のアクセスポイントを利用して通信を行うことが可能です。

2つ目は、ナースコールと連動が難しい点です。ナースコールは患者が病室から、押しボタン端末を使いナースステーションにいるスタッフや、巡回しているスタッフを呼ぶ為のシステムで、ものによってはPHSや他の機器との連動が可能です。
無線機とナースコールの連動は出来なくはありませんが、無線機は通信に特化している製品で、緊急時にも強い個別の自営通信が可能です。チャイムや表示ランプなど、ナースコールと連携できる呼び出しシステムは他にも存在する為、それぞれと並行しての使用をおすすめいたします。

通信手段2:デジタルコードレス電話機(1.9GHz)

デジタルコードレス電話機はアンテナ親機と子機を用いて通信する方法です。アンテナ親機は1.9GHz帯での広周域で子機に対し無線通信方式を使用し、音声やデータ通信の共有ができます。

そこでこの節では、こうした特徴のデジタルコードレス電話機のメリットとデメリットを解説します。

メリット

デジタルコードレス電話機のメリットは2つあります。1つ目はアンテナ親機と子機が無線接続される点です。移動しながら通話できるため、通話する際にひとつの場所に縛られることがありません。

たとえば、通信できる場所が1つの場所に限られていると、通信が必要になるたびにその場に行く必要があります。一刻を争うことがある医療の現場において、貴重な時間を移動時間に費やすのは得策ではないでしょう。

どこでも通信できるデジタルコードレス電話機なら、エリア内にいる限りその場で通話を始められます。結果、移動の時間が削減できます。

2つ目は、場所を取らない点です。デジタルコードレス電話機は親機も子機もコンパクトなので、設置場所に困りません。

3つ目は、他機器との電波干渉を受けづらい点です。
従来の2.4GHzの周波数帯は、電子レンジやWi-Fi、病院であれば医療機器なども使用している場合があります。その周波帯を回避できる点は、医療現場で大きなメリットになるでしょう。

デメリット

デジタルコードレス電話機には、2つのデメリットがあります。
1つ目は、2.4GHzの周波数帯のデジタルコードレス電話機があり、専門的な知識がないと間違えやすいという点です。
2.4GHzの周波数帯のデジタルコードレス電話機は、
ほかの通信機器と混信する可能性があります。たとえば院内で使用しているWi-Fiなどの電波です。

デジタルコードレス電話機で通話している最中に混信が起きてしまうと、声が途切れ途切れになりスムーズな会話が成り立ちません。
導入の際は、周波数帯を確認する必要があります。

2つ目は、親機から離れすぎると通信できない点です。デジタルコードレス電話機の通信範囲は無制限ではありません。機種によっても左右されますが、安定して通信ができる距離は、親機から半径約10~50mとされています。

広範囲で移動しながら通信したい場合は、複数のアンテナ親機を増設しなくてはなりません。また、PHSサービス終了の余波を受け、機器価格の高騰も今後の懸念点として挙げられます。

通信手段3:sXGP

sXGPは「shared eXtended Global Platform」の略称です。企業や組織が自ら通信ネットワークを構築できる規格で、構内PHSに代わる規格とされています。

医療機器に対する電波障害の心配もいりません。なおsXGPは、LTEの技術を用いて独自でネットワーク環境を構築するので、プライベートLTEとも呼ばれます。

メリット

sXGPのメリットは以下の2点です。

・PHSに比べて活用の幅が広がる
・安定した通信が可能

sXGPはと、PHSよりも活用の幅が広がります。端末にスマートフォンを利用できるからです。

今まで通り通信手段としても利用できるうえに、スマートフォンに搭載されている機能も使えます。なお、許可されたユーザーしか利用できないSIMカードを用いるため、高いセキュリティ性能を発揮できるのもポイントです。

また、sXGPは自営のネットワークを構築して利用するため、災害などで通信障害が発生したとしても、その影響をほとんど受けません。自営通信システムが生きている限り、安定した通信を行えるでしょう。

デメリット

sXGPのデメリットは以下の2点です。

・ノウハウが少ない
・導入のハードルが高い

sXGPは比較的新しい技術なので、ノウハウは多くありません。PHSのように昔からあるような技術だと、書籍やインターネット上に豊富なノウハウが蓄積されているため、初めて使う場合でもノウハウを見ることで徐々に使いこなせたでしょう。

反対に、sXGPは公開されているノウハウが比較的少ないので、すべての問題を解決できないこともあります。導入から活用までに時間がかかる点はデメリットといえるでしょう。

また、sXGPは導入のハードルが高いのも特徴です。sXGPを利用するためには、機材の導入だけでなく、自営通信システムの設計や構築などの作業を行わなければいけません。

導入して設置するだけで利用できるシステムに比べると、費用も時間も大幅に必要です。先述した「ノウハウが少ない」というデメリットと合わせて、導入から利用までの時間を大幅に遅らせる要因となります。

通信手段4:クラウドPBX

クラウドを経由してビジネスフォンの機能を使える通信手段です。通信デバイスはスマートフォンを活用します。

活用するスマートフォンは、病院用として新たに導入したり、従業員の私物のスマートフォンを活用したりします。この節では、クラウドPBXのメリットとデメリットを解説します。

メリット

クラウドPBXのメリットは2つあります。ひとつ目は通信の場所を問わない点です。クラウドPBXは、クラウドを経由して利用するため、インターネット環境が整っている場所であればどこでも利用できます。

病院の外にいたとしても、外線や内線を受け取れます。また、スマートフォンを活用するため、荷物がかさばることもありません。

2つ目はコストが安い点です。クラウドPBXは、デバイスに専用のアプリを入れるだけで利用できます。そのため、スマートフォンがあればアプリの利用料だけでビジネスフォンの機能を使用可能です。

デメリット

クラウドPBXのデメリットは、スマートフォンのスペックによって通信の快適さが左右される点です。クラウドPBXは、用意したスマートフォンに専用のアプリを入れて利用します。したがって、スマートフォンのスペックが低いと通信に支障をきたすおそれがあるでしょう。

たとえば、容量過多による遅延や通信速度の遅さによるタイムラグなどです。また、スマートフォンの耐久性によっては少しの衝撃で壊れてしまう、といった物理的なデメリットもあります。

また、クラウドPBXは通信障害時に影響を受ける可能性があります。sXGPは自営通信システムなので、この点が大きく異なる点です。

まとめ

2023年3月31日をもって、PHSサービスは終了しました。理由は、医療機器に影響のない通信規格を有した携帯電話やスマートフォンが普及し始めたからです。

PHSサービスが終了したため、今までPHSを導入していた病院などでは、コスト面での圧迫や業務効率の悪化といった影響が出ると考えられます。したがって、これからはPHSサービスに変わる新しい業務用端末を導入しなければいけません。

たとえば、無線機やトランシーバー、デジタルコードレス電話機などです。導入する際の課題としては、コストやセキュリティ、プライバシー、通信の安定性などが挙げられます。

なお、ジャパンエニックスでは、PHSサービスに代わる通信端末を数多く取り揃えており、無料デモも承っております。医療現場では医療機器への影響や、通信ができるのか不安に思うことも多いと思いますが、実際に通信テストを行い機種の選定ができます。

業務内容にあったものから、コスト面やセキュリティ面に配慮したものまで柔軟にご用意いたします。現在、無線機の導入をお考えの方はぜひお問い合わせください。