スマートフォンが普及し、誰もが1台所持している現在においても、警備の現場では通信手段として、無線機を採用するのが一般的です。その大きな理由として、警備の現場では迅速な意思疎通が求められることや屋外の過酷な環境下での業務など、警備業ならではの特性が関係しています。

そこで本記事では、警備業で無線機が選ばれる理由や警備員におすすめの無線機を紹介します。これから自社業務に無線機を導入したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

警備業で無線機が選ばれる理由

施設警備や交通誘導といった警備業は、警備員同士が離れた場所に配置されることが多く、ほかの警備員との連携がとくに重要です。近年では、誰もが自分専用のスマートフォンを所有しているため、スマートフォンを使って意思疎通を図ることも不可能ではありません。

しかし、スマートフォンが普及した現在においても、警備業では従来同様に無線機が使用される場面がほとんどです。その理由は、スマートフォンにはない利便性やメリットが無線機にあるからです。

無線機ならではのメリットとしては、以下のようなものがあります。

即時性に優れている

警備業の現場では瞬時に意思疎通を行う必要があります。たとえば、交通誘導の場面では車線を塞いで交互に車を行き交わせる、片側交互通行を行います。車を通す場合は、反対側の警備員にこれから車を通すことを伝え、反対側の車の流れを止めてもらう必要があります。

このようなとき、スマートフォンで意思疎通を行うためには、連絡帳から相手の名前を選んで電話を掛け、相手に通話に出てもらう必要があります。相手は画面を表示したうえで、通話状態に切り替えなければなりません。そうしている間にも車が連なり、長い渋滞が発生してしまうでしょう。

一方で、無線機はチャンネルを合わせていれば、片手でボタンを押すだけですぐに通話状態にできます。通信相手を手動で選ぶ必要もないため、相手とスムーズに意思疎通が図れます。

通話料が発生しない

無線機は携帯電話やスマートフォンのように、通信回線を利用する仕組みではないため、通話料が発生しません。何回通信しても、料金がかからないため、気兼ねなく通話できる点が魅力です。

耐久性が高い

警備業務はさまざまな場所で行われます。ショッピングモール内の警備や守衛室の入館業務など、屋内で行う業務や、駐車場警備やイベント警備などのように、屋外で行う業務も多いです。

屋外で業務をしている以上、突然の雨に降られることも少なくありません。このような場合に求められるのが、本体の防水性能です。

屋外の過酷な環境にも耐えられるよう、無線機は耐久性・耐水性に優れたモデルが多く販売されています。警備業をはじめ、消防や自衛隊などの災害救助活動で無線機が用いられるのはそのためです。

全員へ一括共有できる

無線機は同じチャンネルに接続している端末に対して、音声を一斉送信できます。伝えたい情報や緊急の情報を瞬時に全体共有できるため、すばやい対応が必要な場合に便利です。

たとえば、イベント会場でトラブルが発生したために、すべての警備員に指令を出す場合でも、スマートフォンを使用する場合は個別に電話をかけなければなりません。

無線機の場合は個別に通信する必要が無く、全体に向けて同時に情報を伝達できます。コミュニケーションにかかる手間も、電話より少なくてすみます。

災害時にも強い

大晦日から元旦に日付が変わった際に、メールやLINEが届きにくくなる現象に遭遇したことがある人は多いでしょう。メールやLINEが届きにくくなるのは、通信回線が混雑していたり、回線がパンクしないように、通信事業者側で制限をかけていたりするためです。

このようにスマートフォンはデータ回線を使用するため、災害発生時やイベント会場、タイミングなどによって、著しく通信品質が低下するケースがあります。

無線機はスマートフォンなどとは違い、無線機同士で直接やりとりを行う仕組みのため、こうした環境要因に左右されずに安定した通信品質が保てます。

警備員が使用する無線機の種類と各メリット

警備員が使用する無線機にはいくつかの種類が存在します。ひとことで無線機といっても、すべて同じ性能というわけではなく、それぞれ特性があります。

そのため無線機を導入する場合は、無線機の種類ごとの特性やメリットを把握し、現場にあった適切なタイプを選択することが大切です。

IP無線機・LTE無線機

IP無線機・LTE無線機は、スマートフォンなどと同じようにデータ回線を利用して通信を行うタイプの無線機です。無線機と携帯電話の長所を併せ持ったような無線機で、通信の品質も高いのが特徴です。

メリット

IP無線機・LTE無線機の最大のメリットは、通信距離の長さです。このタイプの無線機は、データ回線を利用するため、通信距離に制限がありません。電波が届いていれば、どこにいても携帯電話が使えるのと同じように、IP無線機・LTE無線機は携帯電話がつながる場所なら、遠く離れている人とも通信が可能です。免許や登録が不要で手軽に導入でき、通話品質も良好です。

簡易業務用無線機

簡易業務用無線機は、業務連絡手段として広く運用されている無線機です。簡易業務用無線機を利用するためには免許が必要です。

メリット

簡易業務用無線機は出力が大きいため、電波が強いという特徴があります。たとえば、複数の階層をまたぐ通信や屋内と屋外の通信など、障害物があり見通しが効かない場所でも、広範囲に通信できます。

特定小電力トランシーバー

特定小電力トランシーバーは、免許や資格がなくても手軽に使えるトランシーバーです。道路工事現場の車両誘導のような、小規模な警備現場などで利用されています。

ポケットに入るサイズのスマートな製品も多く販売されているため、警備業だけでなくレストランや小売店舗など、小規模なエリアでの通信が必要なシーンに向いています。

メリット

特定小電力トランシーバーの最大のメリットは導入の手軽さです。簡易業務用無線機のように特別な免許や資格がなくても誰でも扱えることから、警備業だけでなく多くの業種で利用されています。本体価格も安価で手軽に導入できるでしょう。

また、特定小電力トランシーバーは小型軽量で扱いやすく、重量も100g〜150g程度とスマートフォンとほとんど変わらない程度の重さの製品が多いです。運用時間も簡易業務用無線機が12時間程度のところ、特定小電力トランシーバーは30時間程度の運用時間があり、消費電力が少ないためバッテリーが長く持続します。

警備職での利用におすすめの無線機

巡回や立哨など、立ち仕事が多い警備職には軽量で耐久性に優れたモデルの無線機がおすすめです。

ここでは、おすすめの無線機を紹介します。

全国対応:IP無線機・LTE無線機「IP502H」

アイコムの「IP502H」は、IP無線機で初めてデュアルSIMに対応したモデルです。IP無線機は、携帯電話やスマートフォンなどと同じようにデータ回線を利用して通信を行う仕組みです。

そのため、災害時やイベント会場など、回線へのアクセスが集中するシーンでは、通信が不安定になる可能性もゼロではありません。

しかし、IP502HはデュアルSIMに対応しているため、2つの通信キャリアの回線を切り替えて使用できます。片方の回線が混雑で通信しにくい場合は、もうひとつの回線に切り替えて通信を行うことで、回線が混雑するシーンでも安定的に通信が行える点が特徴です。

また、スピーカー出力も900mW以上の大音量のため、大きな騒音が出やすい花火大会などのイベント会場、工事現場などにおける警備業務で、とくにおすすめです。

回線の混雑が予想されるシーンでも使える、アイコム「IP502H」の詳細は、こちらで確認ができます。

長距離対応:デジタル簡易業務用無線機「TCP-D261BT」

KENWOODの「TCP-D261BT」は、業界トップクラスの薄型ボディと、高い堅牢性を備えた無線機です。本体重量は242gと軽量でありながら、IP54/55/67/68に対応した高い密閉構造で設計されており、粉塵が多い工事現場や急な雨に降られやすい屋外での立哨、交通誘導などの業務に最適です。

さらに、KENWOOD製のBluetoothヘッドセットにも対応しており、ペアリングさせることで、イヤホンケーブルなしで通信が可能になり、取り回しが向上します。

また「はっきり聞き取りモード」搭載により、マスクをしている場合でもはっきりと声が伝わるモードを搭載しています。オーディオ機器の製造に精通しているKENWOODならではの嬉しい機能といえるでしょう。

Bluetoothヘッドセットにも対応している、KENWOOD「TCP-D261BT」の詳細は、こちらで確認ができます。

短距離対応:特定小電力トランシーバー「FTH-314」

STANDARD「FTH-314」は、わずか83gの超軽量ボディと、優れた省電力性能が特徴の無線機です。スマートフォンよりも軽量な本体重量でありながら、単三乾電池1本で約30時間以上の連続運用が可能というパワフルさを兼ね備えているうえ、防塵・防水性能も高く、屋外などハードな環境での使用に適したモデルです。

軽量でスマート、電池持ちも優れているモデルのため、イベント会場の警備や工事現場での交通誘導などの際におすすめです。

軽量でバッテリー持ちもよい、STANDARD「FTH-314」の詳細は、こちらで確認ができます。

まとめ

本記事では、警備業でなぜ無線機が選ばれているのかについて説明しました。

警備業はひとりで警備を行うこともありますが、複数人でチームとなって業務を行うケースも多いです。そのため瞬時に全員と意思の疎通ができる必要があります。

スマートフォンなどでも意思の疎通はできますが、スムーズなコミュニケーションは難しいです。無線機は同じチャンネルの相手と直接やり取りするため、通信相手を選ぶ手間もなくボタンひとつで通信できることから、現在でも無線機が使用されています。

ジャパンエニックスでは、さまざまな無線機を取り扱っています。自社の業務に最適な無線機を知りたい、無線機を一時的にレンタルしたいなどのご要望をお持ちのお客様へ、当社が最適な無線機をご提案し、お悩み解決のお手伝いをさせていただきます。