無線機にはさまざまな種類があり、搭載している機能も機種によって異なります。そのなかでもデジタル小電力コミュニティ無線は、免許や資格を取得することなく利用できます。

しかし、デジタル小電力コミュニティ無線の特徴や、どのような場面で活用できるのかわからない方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、デジタル小電力コミュニティ無線の特徴や利用シーンについて解説します。また、ほかの無線機と異なる点も紹介していますので、デジタル小電力コミュニティ無線の導入を検討中の方は、ぜひご覧ください。

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デジタル小電力コミュニティ無線とは

▶デジタル小電力コミュニティ無線 「DJ-PV1D」

デジタル小電力コミュニティ無線とは、150MHz帯での通信に対応した無線機です。高齢化が進んでいる日本において、地域全体での高齢者のサポートや地域社会とのつながりを深められるよう、低コストかつ操作も簡単な通信手段の必要性が高まっていました。そこで、このような課題の解決策としてトランシーバーの活用が注目を集めています。

デジタル小電力コミュニティ無線で使用する150MHz帯は、これまで山間部での野生動物の監視用として主に利用していた周波数帯です。しかし2018年の法改正により、市街地での使用も可能となりました。

市街地での使用により、地域住民との情報交換や高齢者の徘徊対策など、さまざまな場面での活用が想定されます。

特徴1:免許不要で使用できる

通常、無線機を使用するには免許や資格が必要です。しかし、デジタル小電力コミュニティ無線は免許や資格を取得せずに使用できます。

購入後すぐに利用できることから導入のハードルも低いため、気軽に使用できる点はメリットと言えます。

特徴2:GPS機能を有している

GPS搭載の無線機は近年増えてきており、デジタル小電力コミュニティ無線も例外ではありません。法改正前は山間部での使用のみだったため、GPS機能の搭載は義務でしたが、法改正後の現在も標準装備されています。

GPS機能によって所有者の現在地が特定できるだけでなく、子どもや高齢者の位置を特定する際にも利用可能です。また、機種によっては関連ソフトをインストールしたパソコンをインターネットに接続し、無線機を持っている複数の人を地図上に表示できる機能も備えています。

特徴3:遠くの相手と通信できる

特定小電力トランシーバーの場合、送信出力は約10mWと小さく、市街地では100~200mの範囲が限界です。

一方のデジタル小電力コミュニティ無線は、山間部での使用を想定して作られていたため、特定小電力トランシーバーの約50倍もの送信出力500mWを誇っています。そのため、障害物の多い場所でも遠くにいる相手との通信が可能です。

特徴4:周辺の音声を取得できる

デジタル小電力コミュニティ無線は、相手との通信が困難な場合などに、周辺の音声を取り込むホットマイク機能を持っています。周辺の音声を取り込むことで、相手の現在位置の特定が容易になり、迷子や行方不明者の発見がしやすくなります。

機種によっては「周囲音送信機能」と呼ばれる機能があり、登録している相手の無線機から自動送信させることで、相手の周囲の音を受信することも可能です。

特徴5:防水・防塵機能が搭載されている

デジタル小電力コミュニティ無線は、本来山間部での使用を想定して作られていたため、防水・防塵機能が搭載されているほか、耐久性の高さも魅力です。そのため、雨天時や粉塵の舞う現場などでも問題なく使用できます。

特徴6:操作性に優れている

デジタル小電力コミュニティ無線は、免許や資格を取得する必要がなく地域コミュニティでの使用を目的としているため、簡単に使用できるよう操作性はシンプルです。そのため、機械の操作が苦手な方や子ども、高齢者でも直感的な操作が可能となっています。

他の無線との違いを比較

免許を保有する必要がなく、使いやすさに優れたデジタル小電力コミュニティ無線ですが、無線の種類はさまざまあります。ここでは、以下の無線機の特徴について解説します。

・特定小電力トランシーバー
・デジタル簡易無線機
・IP無線機

それぞれの違いを把握し、デジタル小電力コミュニティ無線と比較してみましょう。

特定小電力トランシーバー

特定小電力トランシーバーは、デジタル小電力コミュニティ無線と同様、免許や資格を取得する必要のない無線機です。しかし、デジタル小電力コミュニティ無線とは無線機としてのスペックが異なります。

先述したように、デジタル小電力コミュニティ無線は特定小電力トランシーバーの50倍もの送信出力を持っており、遠距離での通信に適しています。一方、特定小電力トランシーバーは送信出力が低いものの、機種のバリエーションは多くコスト面ではデジタル小電力コミュニティ無線よりも優れています。

そのほかに、使用する電波の出力が小さいことから、電力の消費が少ない点も特徴です。運用方法によって違いはありますが、単3電池1本につき約30時間稼動するため、1日中使用しても電池切れの心配がありません。

特定小電力トランシーバーは、飲食店でのスタッフ間の連携や小規模イベントなど範囲が限られた場面などで活用できます。

デジタル簡易無線機

デジタル簡易無線機とは、デジタル通信方式を用いた無線機で、音質が優れている点や通信距離の長さが特徴です。通信距離は約1~5kmと広く、場所によっては10km離れていても通信が可能です。

一方で使用する際は免許の申請が必要なほか、電波利用料を支払わなければなりません。この点はデジタル小電力コミュニティ無線と大きく異なります。

デジタル簡易無線機は広範囲での通信が可能なため、大規模イベントでのスタッフ間の連絡手段や、ショッピングセンターでの警備などに適しています。また、スマートフォンの電波が届きにくい山間部での使用にも適しており、遭難した際の貴重な連絡手段としても役立てられます。

IP無線機

IP無線機とは、携帯電話のデータ回線を用いて通信を行う無線機です。デジタル小電力コミュニティ無線同様、免許や資格を取得せずに利用できますが、通信範囲はIP無線機が圧倒的に広い点が大きな違いです。

デジタル小電力コミュニティ無線の場合、通信距離は500m~2kmほどの範囲にとどまります。一方のIP無線機は携帯電話のデータ回線が利用できるため、数百キロ離れた場所にいる相手とも通信可能です。

安定した通信環境が得られるIP無線機ですが、利用するには月々の通話料が発生するため、コスト面ではデジタル小電力コミュニティ無線に軍配が上がります。また、データ回線がつながっていないエリアにいる場合、IP無線機では通話が困難になります。

無線機を使用するエリアが限られている場合、IP無線機よりもコストを抑えられるデジタル小電力コミュニティ無線の利用がおすすめです。

デジタル小電力コミュニティ無線の利用シーン

デジタル小電力コミュニティ無線の利用に適しているシーンは、主に以下の6つです。

・災害・避難訓練
・工場・倉庫・警備
・レジャー
・鳥獣駆除・猟友会
・自動車販売業
・各種サービス業

多様なシーンでの利用ができるため、上記のシーンについて詳しく解説します。

利用シーン1:災害・避難訓練

台風や地震、大雨などの自然災害が発生し、停電によって電話が使用できないといった事態に陥る可能性があります。その際にデジタル小電力コミュニティ無線を活用することで、電話に代わって状況報告や安否確認、避難に関する連絡などが可能です。

広範囲での利用に適している一方、利用した経験がないといざという時にスムーズに使いこなせない可能性もあるでしょう。万が一の場合にすぐ使用できるよう、避難訓練の際に使用して使い方を学ぶことをおすすめします。災害が発生してもすぐに使用できる状態にすることで、迅速な避難行動などにつなげられます。

利用シーン2:工場・倉庫・警備

工場や倉庫など、障害物が多い環境でもデジタル小電力コミュニティ無線は活用できます。障害物がある場所でも500mほどの距離であれば通信が可能なため、業務に関する連絡ができます。

障害物が多い環境での警備でも問題なく使用可能です。何らかの異常が発生した際にすぐ連絡できるため、その後の対応が迅速に進められるほか、工場や倉庫での災害発生時や負傷者の搬送などの対応にも重宝します。

デジタル小電力コミュニティ無線にはGPS機能が搭載されているため、作業員が事故に巻き込まれた場合や体調不良が起きた際、作業員の場所の特定が容易になるでしょう。

利用シーン3:レジャー

アウトドアやスキー、ゴルフなど広い範囲で行われるレジャーでもデジタル小電力コミュニティ無線は活用できます。とくにゴルフでは、周囲に障害物が少ないことから5km以上の通信が可能な場合もあります。そのため、急な天気の変化や事故が起きた際でも広範囲での連絡が可能です。

アウトドアでも有効利用が可能で、キャンプ地から遠く離れた場所にいる相手との連絡手段として活用できます。このようにレジャーでもデジタル小電力コミュニティ無線があれば、万が一の事態が発生した際もスピーディーに連絡をとることができます。

利用シーン4:鳥獣駆除・猟友会

山の中での鳥獣駆除や猟友会において、無線機の使用は仲間との連携に欠かせないものです。携帯電話の場合、山の中では電波が届きにくいほか一対一での連絡となってしまうなどのデメリットがあります。そのため、無線機を使用することで複数人と連絡をとれるようになり、効率的な鳥獣駆除が可能となります。

デジタル小電力コミュニティ無線は免許や資格が必要ないため、購入してすぐに山間部での連絡手段として取り入れることが可能です。

利用シーン5:自動車販売業

カーディーラーなどの自動車販売業でも、デジタル小電力コミュニティ無線は活躍できます。お客様が気になった自動車を試乗する際、デジタル小電力コミュニティ無線を用意すれば、トラブルが発生した際も迅速な対応が可能です。

スマートフォンなどの携帯電話でも対応できますが、通話に手間がかかってしまうといったデメリットがあります。また、一斉通知された場合にタイムラグが発生し、対応に遅れが生じる事態にもなりかねません。そのため、通信距離が広範囲に及ばない場合は、デジタル小電力コミュニティ無線が適しています。

利用シーン6:各種サービス業

飲食店やアパレルショップ、ホテルなどのサービス業にてデジタル小電力コミュニティ無線を活用すると業務効率化などにつなげられます。サービス業に取り入れれば、スタッフ同士でスムーズに伝達できるようになり、お客様に迅速なサービスの提供が実現できます。

店内の規模が広い飲食店の場合、これまでは大勢のスタッフを配置しお客様に対してすぐに対応できる体制が必要でした。しかし、デジタル小電力コミュニティ無線を導入すれば必要な時のみスタッフを呼べるようになるため、人件費の削減にもつながります。

デジタル小電力コミュニティ無線の導入により、サービスの向上やコスト削減の効果が期待できます。

デジタル小電力コミュニティ無線の選び方

デジタル小電力コミュニティ無線は、ほかの無線機よりも比較的新しいタイプであるため、まだ種類は多くありません。しかし、それぞれの無線機によって特徴が異なるため、選び方を把握する必要があります。

まず、機種によってバッテリーの駆動時間が異なり、およそ11~14時間の差があります。バッテリーは充電式のタイプがほとんどのため、長時間の使用を想定している場合、駆動時間は重要なポイントです。

そのほか、周辺の音声を取り込めるホットマイク機能を搭載している機種もあり、相手の現在地を特定する機能を求めている方におすすめです。また、災害時に活用する場合はラジオ機能の有無も大事なポイントになるでしょう。

まとめ

デジタル小電力コミュニティ無線は、150MHz帯での通信を行うデジタル無線機で、高齢化が進んでいる日本において、簡単に利用できる通信手段として注目されています。免許不要で使用できるほか、GPS機能を搭載しているため、迷子や行方不明者、認知症の方の徘徊といった対策に有効です。

特定小電力トランシーバーと比較して約50倍もの送信出力を持っており、障害物がない場所では1~2kmほどの距離でも通信できる点が特徴です。災害時やイベント会場などで活躍できる機能を豊富に搭載しているので、手軽に連絡手段を取り入れたい方は、ぜひ導入を検討しましょう。

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