MCA無線とは、中継局を介して相手と通信するタイプの無線です。その特徴から、通信が集まる時間や時期にも安定した通信ができます。

では、そんなMCA無線は具体的にどういったシーンで役立つのでしょうか。本記事では、MCA無線の概要のほかにも、主な利用シーンやメリット、デメリットを解説します。

MCA無線とは

MCA無線とは無線機の種類のひとつで、800MHz帯の電波を利用します。「無線機」というと、自分と相手の無線機同士で直接電波を送受信する、簡易業務用無線を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

MCA無線は、全国に点在する中継局を介して相手と通信します。契約を行った中継局の範囲内であれば通話可能であり、契約内容によっては全国の中継局を利用できます。

複数の周波数のなかから混雑率の少ないチャンネルを選んで通信するため、マルチチャンネルアクセスといわれています。

MCA無線の主な利用シーン

MCA無線は、主に以下のようなシーンで利用されます。

● 緊急・災害時

● 日常業務

この章では、それぞれのシーンでどのように利用されているのか詳しく解説します。

利用シーン1:緊急・災害時

MCA無線は、緊急時や災害時に活用されます。なぜなら、いつでも安定した通信が可能だからです。

災害時は、多くの被災者が連絡を取り合うため、データ回線の中継局は極めて混雑します。くわえて、政府も消防や警察の通信を優先することが多いため、一般の携帯電話はつながりにくくなります。

一方で、MCA無線は移動無線センター独自の中継局を利用するため、安定した通信が可能です。業務用としての契約のみのため一般の利用がなく、契約回線数も決して多くはないため、回線パンクの可能性が低く、過去の災害時実績も豊富です。また、中継局は耐震工事が施されているうえに、定期的なメンテナンスが行われています。

電源の供給が途絶えても非常用の自家発電装置により電気が確保可能なため、災害時に役立ちます。

利用シーン2:日常業務

MCA無線は日常業務でも多く利用されています。たとえば、、医療関係といった災害時に出動する業種です。災害時には安定した通信が求められるため、災害時でも通信できるMCA無線はこれらの業種に欠かせないものです。

また、離れた場所同士で連絡を行う業種にも使用されます。たとえば、バスやトラック、鉄道、タクシーです。業務中にスマートフォンを開いたり画面を見たりする必要がなくなるので、安全性の観点からも頻繁に活用されています。

なおMCA無線は、地域別中継局単位で契約できます。業務の範囲に合わせて契約する地域の中継局を選べるという特徴も、業務範囲が広くなる業種に適しています。

MCA無線の通信エリアと料金

MCA無線の通信エリアは、中継局の半径20〜40kmです。中継局は全国に約100箇所以上あり、契約した中継局の範囲が使えます。契約する中継局の数は選択可能ですが、山の中や都市部では通信が乱れることもあるので注意が必要です。

MCA無線の料金について、以下の表にまとめました。

プラン名概要料金(1台あたり/月額)
シングルエリア1つの中継局を利用可能。2,200〜2,530円(税込)

アーバンシングルエリア都市部にある1つの中継局を利用可能。グループ通信や個別通信を行える。2,090〜2,420円(税込)
ワイドエリア2〜4つ、あるいはすべての中継局を同時に利用し、各地方の全エリアで通信可能。2,310〜2,750円(税込)
アーバンワイドエリア都市部にある4つ、あるいはすべての中継局を同時に利用し、各地方の全エリアで通信可能。2,200〜2,640円(税込)
ライトデータ各地方の全エリアで、1台あたりひと月平均通信時間5分以下のみを行える。緊急時には音声通信を行える。550円(税込)あるいは1,100円(税込)

アーバンシングルエリアやアーバンワイドエリアは、地域によって利用できないケースがあります。

MCA無線のメリット

MCA無線のメリットは以下の5つです。

● 広域で無線通信できる

● 混信や盗聴を気にせず使用できる

● 災害時でも通信を行える可能性

● GPSと連動させられる

● 低コストで導入できる

メリット1:広域で無線通信できる

1点目のメリットは、広域で無線通信できる点です。MCA通信は、全国の117箇所に中継局があります。そのため、全国の中継局を利用できるプランを契約すれば、日本内でどれだけ距離があっても無線通信が可能です。

相手の無線機に直接電波を飛ばすタイプの無線では距離制限があるため、職種や使い方

によっては業務に支障をきたすかもしれません。その点、MCA無線は中継局のカバー範囲であれば通信できるため、距離の心配が大幅に緩和されます。長距離の移動を必要とする職種にとっては、魅力的なメリットだといえます。

メリット2:混信や盗聴を気にせず使用できる

メリットの2点目は、混信や盗聴を気にせず使用できる点です。MCA無線は、出荷時にユーザーコードを設定することができます。そして、同じユーザーコードが割り振られた人同士でしか通信できません。違うユーザーコードを持つ人は通信できないため、盗聴されるリスクが限りなく低いです。

また、別の通信に干渉して混信を起こす心配もありません。こうした特徴から、個人情報などの秘匿性の高い情報をやり取りする業種にも推奨できます。

メリット3:災害時でも通信を行える可能性

メリットの3点目は、災害時でも通信を行える可能性がある点です。MCA無線では、空いたチャンネルに自動的に接続されます。そのため、どれだけ混雑している状況下でも、チャンネルが空きさえすれば比較的安定した通信が可能です。

携帯電話と違い業務ユースのみのため、契約数も限られており、回線パンクのリスクが少ないことも利点です。

また、中継局の設計は新耐震基準に基づいて設計されているうえに、非常用発電装置を備えています。もちろん、定期的なメンテナンスも行われています。

さらに、監視体制が万全です。24時間365日無休で有人の監視を行っており、災害が発生した際は被災地から離れた場所に監視が移ります。したがって、MCA無線は災害時でも利用できる可能性があります。

メリット4:GPSと連動させられる

4点目のメリットは、GPSと連動可能な点です。相手の居場所を特定しながら通信できるため、業務効率の向上につながります。

たとえばタクシー業界では、乗客が待つ場所に最も近い車両を向かわせることができるため、迅速な配車が可能です。そのため、ドライバーに余計な距離を走行させる必要がなく、顧客の満足度向上にもつながります。

メリット5:低コストで導入できる

メリットの5点目は、低コストで導入できる点です。MCA無線は、自分でアンテナや中継局といった設備の設置が必要ありません。全国に既に点在する中継局と契約するだけで通信できるようになります。

無線の種類によっては、アンテナ工事や中継局の設置などの大規模な導入作業が必要であり、コストも時間も大幅にかかるケースがあります。その点、MCA無線は比較的安いコストで導入できる点がメリットです。

MCA無線のデメリット

続いては、MCA無線のデメリットとして以下の4つを解説します。

● 中継局エリア内でしか通信できない

● 中継局が多いと利用料が高くなる

● 免許の取得が必要となる

● 音声や音質が不安定な可能性がある

デメリット1:中継局エリア内でのみ通信できる

1点目のデメリットは、中継局エリア内でしか通信ができない点です。MCA無線は、中継局エリアの外に出ると通信ができなくなってしまいます。

携帯電話ほど中継局が潤沢にあるわけではなく、山間部やトンネル、建物内は県外になることがあります。

具体的な範囲としては、契約している中継局の半径20〜40kmです。業務の範囲が限られるため、長距離の移動を必要とする業種は不便を感じるでしょう。

たとえば、長距離移動を必要とする運送会社です。多くの場合、県を跨いで移動するので、20〜40kmの移動は日常茶飯事です。ひとつの中継局しか契約していないと、すぐに通信ができなくなります。

仮に範囲を広げようとしても、追加の使用料を支払わなければいけません。こうした点はMCA無線のデメリットです。

デメリット2:中継局が多いと利用料が高くなる

デメリットの2点目は、中継局が多いと利用料が高くなる点です。MCA無線はシステム上、中継局1箇所ごとに契約料が必要です。したがって、契約する中継局が多くなるほど、それだけ高い利用料を支払わなければいけません。

場合によっては、複数の中継局をまとめて契約することで、割引されるプランもあります。それでもなお、ひとつの中継局を契約するケースに比べると利用料が高額になることは避けられません。

またMCA無線の料金は、無線機1台ごとに加算されていく仕組みのため、無線機の台数が多いほど利用料も増加します。

デメリット3:免許の取得が必要となる

3点目のデメリットは、免許の取得が必要となる点です。MCA無線は遠距離用業務無線に分類されるため、使用するには免許を取得する必要があります。もちろん、免許を取得するまでMCA無線が使えません。

免許を取得するには、管轄の総務省にある総合通信局に必要書類を提出する必要があります。工程としてはこれだけで済みますが、免許交付までは3週間ほどかかります。

さらに、免許の有効期限は5年間です。定期的な更新が必要になるので、不便さを感じることがあるでしょう。

デメリット4:音声や音質が不安定な可能性がある

デメリットの4点目は、音声や音質が不安定な可能性がある点です。MCA通信は障害物の影響を受けるため、周りに障害物があるエリアでは、完璧な通信ができるとはいえません。

たとえば、背の高いビル群の中などです。そのような環境で業務を行う職種にとっては、不便を感じる機会も多いでしょう。

また、風が強く吹いている状況下では、風切り音が入ってしまうこともあります。野外業務が多い職種にとっては、デメリットとなり得ます。

MCA無線とIP無線の違い

MCA無線とIP無線は同じ無線の種類ですが、異なる面がいくつかあります。そこでこの章では、3つの異なる点を解説します。

1点目は、通信の仕組みです。MCA無線は、全国にある中継局を介して通信を行います。

一方IP無線は、スマートフォンと同様に携帯電話回線を用いて通信する仕組みです。したがって、MCA無線は契約した中継局の範囲内に限定されますが、IP無線は携帯電話回線がつながるエリアであればどこでも通信できます。

2点目は、免許の要否です。MCA無線は、免許がなければ使用できません。一方、IP無線は免許が不要です。

3点目は、通信の安定性です。MCA無線は、通信が一極集中する時期や時間でも安定した通信ができます。

IP無線は、通信が集中すると不安定になる可能性があります。そのため、より災害時に活躍するのはMCA無線です。

まとめ

MCA無線とは、全国にある中継局を介して通信を行う無線です。通信可能な範囲は、中継局が対応している範囲内に限ります。

しかし、空いているチャンネルに自動的に接続してくれるため、通信が混雑している状況でも比較的安定した通信が可能です。こうした特徴から、災害時に役立つ無線としても知られています。

なおジャパンエニックスでは、MCA無線をはじめとして多くの無線機をとり扱っております。通信距離によって商品を選べるので、業務に適した無線機をお探しいただけます。現在、無線機の新調や買替えを検討されているのであれば、ぜひお問い合わせください。