大規模な震災や水害などが発生すると、輻輳(ふくそう)の連鎖による大規模通信障害などにより、職場はもちろん、家族や友人との連絡ができなくなることがあります。 

「災害時には、どんな通信手段を使えばいい?」「無線機って災害に強いと聞くけど本当なのかな?」とわからない点がある方もいるでしょう。

本記事では、災害時の連絡手段についてまとめるとともに、無線機が災害に強い理由などについて解説しています。災害時の連絡手段を知りたい方や無線機について調べている方は、ぜひ参考にしてください。

災害時の通信手段について

セコムは全国の20歳以上の男女500人に、インターネット上で「防災に関する意識調査」を行いました。調査では今後の災害や被害に対する増加意識や、防災対策の実施有無、防災リュックの内容、保管場所に関する確認など、計15個の質問が用意されました。

その結果、災害は増加すると回答した方が90.2%いました。その一方で、防災対策をしている方は47.0%にとどまるという結果が出たとされています。

「災害時にスマートフォンや携帯電話などの通話機能が使用できなくなった場合、代替の連絡手段があるか」という質問に関しては「ない」と回答した方が95.6%を占めていました。なかでも、30代の「ない」と回答した方は100%を記録しています。

このように、9割の方が災害に対する不安を持ちつつも、非常用通信の対策はしていない形になります。とくに普段から無線機を使っていない職種の方は、無線機という選択肢があることさえ知らない可能性があるでしょう。

ほかにも実際の災害時、通信の状況がどうだったかについても言及していきたいと思います。

東日本大震災発生時

東日本大震災が発生した2011年3月当時、スマートフォンは今ほど普及しておらず、多くの方がガラケーを使用していました。LINEもまだサービスが開始されておらず、連絡手段といえば、ほとんどが電話か携帯電話という状況でした。

総務省のアンケートが行われた結果、東日本大震災が発生した直後、最初に試みた連絡手段は、電話が72.5%(固定電話が12.7%・携帯電話58.2%・公衆電話1.6%)、電子メールが25.1%(携帯とPHS22.7%・PC2.4%)でした。

震災当時、NTT東日本では首都圏において発信件数が通常時の約15倍に、NTTドコモでは発信件数が50~60倍に跳ね上がり、東北地方から首都圏にかけて、大幅な通信制限がかけられました。

通信制限とは、アクセスが集中し回線容量を超えると、警察などに割り当てられている重要通信が使えなくなる可能性があるため、それを防ぐ目的で通常つながる通話がつながらなくなることをいいます。

このように、実際の災害時も連絡手段は電話に依存しており、なおかつ通信制限によって連絡がとれない状況に陥っていました。

災害時に備えた通信手段の確保が重要

災害が発生した場合、職場や家族と連絡が取れないと不安が大きくなってしまいます。災害時にどのような連絡手段を用いて安否確認をするか、あらかじめ話し合っておくとよいでしょう。

停電が起きると多くの固定電話が使用不可になったり、通信障害がおきたりするなど、災害によって使える手段が変わります。複数の連絡手段を用意して、優先順位を決めておくことが重要です。

災害時に使える通信手段

災害時に使えるのはスマホや携帯電話だけではありません。この章では災害時に利用できる通信手段を比較しながら詳しく解説していきます。

いざというときのためにも、災害が発生した場合の通信手段について、しっかりとチェックしてみてください。

メールやSNS

スマートフォンや携帯電話による通話は回線を占有していますが、パケット通信は1つの回線をシェアするため、災害時の利用が推奨されています。

パケット通信を用いた連絡手段には、EメールやSNS、通話アプリなどがあります。これらを用いて、連絡を取り合うのがおすすめです。LINEでは家族のグループトークを作れたり、既読機能やGPS機能が揃ったりしているため、安否確認をとりやすいのが特徴です。

公衆電話

災害時の通話は、携帯電話よりも公衆電話の方がつながりやすいです。また、災害発生時は携帯電話や固定電話の通信規制がかかるため、必要と判断された場合には公衆電話を無料で利用できます。

無料の場合、受話器をあげて受話口から「ツー」という発信音が聞こえるデジタル公衆電話(グレーもしくは緑色)であれば、電話番号をプッシュするだけでそのまま通話可能です。

受話器をあげても発信音が聞こえないアナログ公衆電話は、先に10円・100円もしくは、テレフォンカードを入れる必要があります。

ただし停電時、テレフォンカードは使用不可のため注意が必要です。公衆電話は駅構内や市役所、ホテル、公共施設に設置されているケースが多いです。いざというときに備えて、自宅周辺にある公衆電話の場所や使用方法について、あらかじめ確認しておきましょう。

災害用伝言ダイヤル(171)

災害用伝言ダイヤルとは災害時に利用できる音声伝言サービスです。災害時に「171」とダイヤルすれば、伝言の録音と再生が行えます。固定電話はもちろん、公衆電話や携帯電話から利用できます。

災害用伝言板(web171)

災害伝言板「web171」は、災害時にインターネットから被災者の安否確認を行える災害用の伝言板です。

自分の電話番号を入力すると「名前・伝言・安否状況」を、最大で100文字書き込めるのが特徴です。また、安否を確認したい人の電話番号を入力すると、その人の伝言板の書き込みを閲覧できます。

伝言蓄積数は20件となっており、最大で6か月保存可能です。テキストによる音声変換など、前述の災害伝言ダイヤル「171」とも連携できます。

災害用統一SSID(00000JAPAN)

大規模な停電や津波、台風といった災害が発生した際、停電が起きてインターネットが利用できなくなるリスクがあります。

災害用統一SSID(00000JAPAN)は、災害が発生した際に、被災地で無料開放される公衆無線LANサービスです。このサービスは、携帯電話やパソコンさえあれば、誰でも利用できるのが特徴です。

使用方法は簡単で、Wi-Fi設定をONにし、ネットワーク選択で「00000JAPAN」を選択するだけです。

しかし、暗号化通信となっていないため、セキュリティ面に注意が必要です。個人情報(ログイン時のIDやクレジットカード情報)の入力が必要なサイト利用は、避けるようにしてください。

衛星電話

通信用人工衛星を直接経由して、音声通話やデータ通信を行える電話をいいます。通信衛星が基地となっているため、電波をキャッチできる場所なら世界中で通話できます。

たとえば、震災発生時に、地上の基地局が倒壊しても影響を受けないのが特筆すべきポイントです。また、地上に設置するアンテナは持ち運び可能な「可搬型」と、車に設置した「車載型」があり、通信環境を速やかに整えられます。

無線機

無線機は、防災において重要な役割を担います。特定小電力トランシーバーや簡易業務用無線機などは、事業者通信網・インフラに頼らない、自営通信といわれるほかに依存しない直接通信で通信が可能です。電源が尽きない限り、いつでも使うことができます。

さらにIP無線機は、携帯電話の電話回線を使って、パケット化した音声の送受信を行えます。電話がつながる場所であれば、全国どこでも通話ができるほか、購入やレンタルで、すぐに利用できるのが特徴です。

IP無線機が災害に強い理由

IP無線機は、災害発生時に重要な役割を担うことで知られています。そのなかでもIP無線機は、電話回線の状態に左右されないなど、災害に強いともいえるメリットが期待できるでしょう。

ここでは、そのほかにもIP無線機が災害に強い理由を解説していきます。

電話回線の状態に左右されない

災害が発生した場合、電話回線がパンクして、電話がなかなかつながらない場合があります。IP無線機は音声をパケットデータに変換して通信を行うため、電話回線と比較するとパンクしにくく、非常時でも通信できる可能性が高いです。

災害の発生状況にもよりますが、災害発生時に電話がつながらなかった場合であっても、IP無線機は通信できたケースもあります。

長距離通信ができる

IP無線機は、通信範囲が広いという点も大きな特徴です。前述のとおり、IP無線機は携帯電話の回線データを用いて通話を行います。そのため、電話がつながる場所なら全国どこでも通話可能です。

複数人での同時通話ができる

災害発生時は対策本部が立ちあげられ、災害状況の把握や救助などの指示が出ます。大規模な企業の場合、複数人で情報を共有しながら対応しなければならないケースも多々あるでしょう。携帯電話は基本1対1での通話となるため、効率がよくありません。

IP無線機はほかの無線機と同様にグループ通話が可能です。対策本部では各メンバーから集まる情報を逐一チェックできるほか、メンバー同士で通話も可能なため、効率よく対応できるでしょう。

文字でのメッセージも送れる

メッセージ送信機能を活用して、文字で指示を出したり、情報を集めたりするのも手軽に行えるのがメリットです。入力もしやすいように工夫されている無線機も多いため、メッセージで急いで伝えたい際にもおすすめです。

動画や写真の送受信可能な端末もある

大型の液晶モニターが付属している無線機も増えてきています。また、OSにAndroidを採用しているケースが多いですが、IP無線機にアプリをインストールしての運用も可能です。

さらに、標準機能に動画や写真でやり取りできる機能もあるのが特徴です。これらを活用すると、災害現場を動画や写真で伝えやすくなるでしょう。

GPS機能を搭載している

IP無線機には、GPS機能を搭載しているものも多数展開されています。GPS機能を駆使すると、発信者の詳しい位置情報の確認を行えます。また、対策本部側は専用のツールを用いると、地図上で各メンバーの位置情報をビジュアル的に確認しやすくなります。

まとめ

大規模な災害が発生すると、職場や家族、友人と連絡が取りにくくなることが予想されます。もし、災害が発生した場合、どのような連絡手段を用いるか、あらかじめ話し合っておくとよいでしょう。

IP無線機は電話がつながる場所であれば、全国どこでも通話ができる通信手段です。購入やレンタルをすると、すぐに利用できるのが魅力です。

複数人での同時通話ができるほか、GPS機能を駆使すると発信者の詳しい位置情報の確認を行えるため、被災地の状況確認も役立つでしょう。

株式会社ジャパンエニックスでは、簡易業務用無線機を中心にIP無線機や特定小電力トランシーバーなどの販売を行っております。

災害時やBCP対策だけでなくさまざまなお客様のニーズを満たせるようスタッフ一丸となり日々努力しています。

無線機のメンテナンスやアフターフォローも丁寧に行っておりますので、無線機の導入を検討している方は、お近くの営業拠点もしくは専用フォームからぜひお問い合わせください。