企業や団体のなかで、コミュニケーションツールとして活躍するのがインカムです。離れた場所にいるスタッフ同士でも、連絡を取りやすく、電話よりも業務の効率アップを図る事ができるでしょう。
インカムは便利な一方で、導入や使用上で費用がかかることや慣れるまでは操作しにくいなどのウイークポイントがあります。これらの問題を解決するものとして、インカムアプリが挙げられ、近年ではグループコミュニケーションツールとして注目を集めています。

インカムアプリとは

インカムアプリは、Wi-Fiや4G・5Gなどのインターネット回線を使用したコミュニケーションツールであり、リアルタイムで複数人とやり取りできることが特徴です。

電話や無線機、従来のインカムに代わるものとして、注目を集めています。とくにスマホにアプリをダウンロードするだけで使用可能、無線機を持ち運ぶ必要がないことが魅力です。

導入コストやランニングコストが従来のシステムに比べて低額で済むため、アプリに乗り換えるケースが増えています。インターネット回線を使用した通話アプリや格安の携帯電話もあるなかで、インカムアプリはどのような点が違うのか解説していきます。

携帯電話・通話アプリとの違い

インカムアプリは、電話や通話アプリでは難しい1対複数人での会話が可能です(通話アプリによって異なります)。複数人と会話をするなら、インカムアプリが最も優れています。

また、通話音質について、通話アプリで複数人とやり取りする場合、つないでいるグループ全体の音声が共有されるため、ノイズが入り聞き取りにくいケースがあります。

電話も同じく、スピーカー機能を使えば、その場にいる複数人とのやり取りができますが、やはりノイズと聞き取りにくさは否めないでしょう。

その点、インカムアプリなら、送信するPTTボタンを押せば発信者となり、発言している間は、周囲の人が受信者となります。やり取りするうえでは、発信者の音声のみ共有するため、クリアに聞こえる強みがあります。

インカムアプリとインカムの違い

これからグループコミュニケーションツールの導入を検討する場合に、アプリと従来のインカムではなにが違うのかを解説します。

以下の主な違い4項目にフォーカスして解説するので、ぜひ目をとおしてください。

 インカムアプリインカム
通信距離インターネット環境、もしくは 携帯通信サービスエリア内対応無線機によって変動
通話方法複数人での通話可能 音質が安定しやすい複数人での通話可能 利用状況によっては音質が不安定
コスト初期コスト不要 月額利用料のみ導入時に端末代・申請料金が必要 バッテリー交換など修理費が発生
リスク通信障害時には使用不可になる可能性あり混信・傍受の可能性あり

通信距離

インカムアプリは、スマホ端末の通信距離がそのまま反映され、インターネット環境があるか携帯通信サービスエリア内なら、日本全国で制限なく使用可能です。最新のスマホ端末を持っているのであれば、さほど問題はないでしょう。

一方インカムは、使用する無線により、通信距離が異なります。たとえば、特定小電力トランシーバーなら、見通しがよい場所だと500m、簡易業務用無線(登録局・免許局)だと5kmと、意外と通信距離は狭いことがわかります。

アプリと同レベルの通信距離を求める場合は、携帯通信サービスエリアやインターネットを使用するIP無線機がよいでしょう。IP無線機はWi-Fiに対応しているものもあり、状況により双方を切り替えて使用できます。

また、通信する範囲内に建物などがあると電波が遮蔽され、電波が不安定になり、聞き取りにくくなったり、通信が途切れたりすることがあります。

そのため、安定したやりとりをしたいとき、場所を問わずやりとりしたいときは、アプリやIP無線機の方が使いやすいでしょう。

通話方式

次に通話方式の違いが挙げられます。従来のシステムでは、複数人での会話ができますが、音質が不安定でノイズが入りやすいなど、聞き取りにくさがありました。

アプリでは、インターネット環境があれば、同条件でもクリアな音質で同時通話が可能です。また、発信者と受信者を切り替えられるため、聞き取りにくさはほぼありません。

コスト

両者の違いのなかでも、とくに特徴的なのがコストです。導入コスト・ランニングコストのどちらも、インカムは1台あたり高額な費用がかかり、アプリは低額で利用できます。

インカムは導入する際に、1台ごとに8,000円以上かかり、簡易業務用無線(登録局・免許局)の場合は、申請料金も必要です。そのほか、バッテリーの買い替えや修理の際も費用が発生します。イベントなどで一時的な利用をする場合でも、コストが高くなる傾向があります。

アプリは導入コストが無料もしくは低額で、月額使用料がかかるとしても、インカムほど高くはありません。不具合が生じたときは、アプリの再インストールなどの手段があり、アップデートにも手間がかからないといった違いがあります。

一時的な利用、中長期の利用だったとしても、コストそのものを抑えられます。

リスク

アプリは従来の欠点を改善できる一方で、通信障害による利用制限や停止の可能性があります。たとえば、大規模イベントなどで多くの人が集まる場合、アクセスが集中し、ネット回線が混雑することもあるでしょう。

また、災害などで物理的にネット回線が遮断された場合も、一時的に使用できなくなるおそれがあります。

対してインカムは、携帯電話のような事業者通信網を利用せず、無線機同士が直接電波をやりとりするほかに依存しない自営通信のため、通信制限などなく、いつでも使うことができます。

ただし無線の種類により、混信や傍受などのリスクがあります。通信範囲内であったとしても、混信のリスクがないわけではありません。そのため、事前に利用する距離や環境を把握しておく必要があります。

インカムアプリのメリット・デメリット

話題のインカムアプリは、インカムの欠点を補うメリットがある一方で、デメリットもあります。それぞれをしっかり把握し理解したうえで、導入するか判断することをおすすめします。

メリット

はじめに、どのようなメリットがあるのかチェックしていきます。

導入が容易

まず、手持ちのスマホにアプリをダウンロードすれば使用できるため、比較的簡単に導入できることが挙げられます。新たに機器を導入する必要がなく、アプリの操作のみで使用できる強みがあります。

また、簡易業務用無線使用時のように、免許取得などの事前準備が無く、その分の労力が発生しないこともメリットといえるでしょう。

少ないコストで導入・管理可能

次に、従来のインカムよりも低コストで利用できる点が挙げられます。インカムは1台ごとにコストがかかりますが、アプリの場合は複数台で利用したとしても、毎月の使用料を負担するのみです。同じ台数で利用する場合を考えると、大幅なコストダウンができるでしょう。

また、スマホを普段どおり持ち歩くだけで機能することや、重たい無線機を持ち歩かなくて済む点も、管理しやすい部分です。端末の充電に関しても、スマホを1台充電できる環境があればよいため、無線機用の充電環境を考慮する必要がありません。

アプリならではの便利機能

スマホはBluetooth機能に対応しているため、イヤホンやマイクがあれば、ワイヤレスで接続できます。そのため、ハンズフリーで通話したいときや手が話せないときにも、柔軟に対応できるでしょう。

また、インターネット環境があれば、距離に関係なく快適に通話できます。従来は、建物などの障害物が多い場所では、電波が不安定になりやすいデメリットがありましたが、インターネットを介することで、克服できたといってよいでしょう。

さらに、複数人での同時通話ができることも挙げられます。通話上のタイムラグを感じることなく、リアルタイムでグループコミュニケーションを取れます。

デメリット

インカムアプリには意外な盲点となっているデメリットもあるので、そちらを確認しておきましょう。

通信エリアが狭い

インカムアプリには、BluetoothやWi-Fiを使用するものが多く、アプリによっては通信エリアが狭くなることが挙げられます。Bluetoothは最大20m程度、Wi-Fiは障害物がない場合でも50mから100m程度の間でしか通信できません。

また、Wi-Fiがない野外などでは、Bluetoothで接続しなければならず、お互いの距離が変動する場合は活用できない可能性があります。いくらインターネット回線があれば全国どこでも使えるとはいえ、環境によっては従来のインカムよりも使えない場合もあるのです。

加えて、山中などスマホの電波が入らない場所では使用できないため、その点も注意が必要です。

バッテリー消費が激しい

スマホにはさまざまな機能があるため、インカムアプリを使うことでバッテリー消費が激しくなるおそれがあります。アプリを頻繁に使用する場合、Bluetooth接続もしくは、Wi-Fi接続の頻度も高くなり、通常のスマホ使用時よりも多くの電力を消費します。

このように、バッテリー消費が激しくなる可能性があるため、長時間の使用には向きません。もし、長時間使用するのであれば、予備のモバイルバッテリーを準備するなど、工夫が必要です。

アプリの品質に左右される

手軽に使用できることが魅力でも、アプリの品質によっては、理想的な使い方ができない場合もあります。インカムアプリは無料で利用できるものもあり、なかには低音質で聞こえにくい、通信など各種設定が難しい、正常起動しないなどのリスクもあります。機能や操作性など、できるだけ高品質で用途に合うものを選びましょう。

サポートが不十分なことがある

アプリによっては、サポートが不十分で回答をもらえなかったり、問題が解決できない事もあります。サポートが不十分な場合は、別のアプリに切り替えるなどの対応が必要です。

事前にアプリのサポートについて、評判や口コミを確認することはもちろん、複数のアプリを比較検討して選択してください。

まとめ

1対複数人でのやり取りができるインカムは、従来の無線を使うものから、スマホアプリに切り替えるケースが増えています。

インターネット回線を使ったやり取りであれば、日本全国どこでも広範囲で使用できるメリットがある一方で、使用状況によってはBluetooth接続やWi-Fi接続に切り替わり、通信距離が狭くなる可能性もあります。

導入時のコスト削減やランニングコストの軽減といった魅力があるとしても、使用シーンや環境に合わせて、インカムかインカムアプリかを選ぶことが大切です。

株式会社ジャパンエニックスでは、お客様の用途に合わせた無線機をご提案します。
少人数でも効率的に働きたい、イベントを安全に開催したいなど、お客様の希望を満たす無線機探しをお手伝いします。無線機の導入や利用をご検討の方は、ぜひご相談ください。