地震や台風、火災などの災害が発生した際、さまざまな通話手段を活用し、家族や友人はもちろん、避難所や救助隊と連絡することがあります。

ただ、通話手段によっては、通信制限などの影響により、上手く連絡が取れないといったケースも少なくありません。

そこで、今回はさまざまな通話手段のなかから、IP無線機が災害時に活躍が期待できる理由や、ほかの通話手段は災害時に適しているかを解説します。

IP無線が災害時に活躍が期待できる理由

IP無線機や携帯電話、固定電話など、さまざまな通話手段があるなか、災害時においてはIP無線を使った通話手段に活躍が期待できると広く注目を集めています。ここでは、災害時にIP無線機が役立つかもしれない4つの理由を詳しく見ていきましょう。

通信制限にかかりづらいため

IP無線機は、携帯電話の電話回線を活用して音声を送受信することから、携帯電話の電波が届くところであれば利用できます。

さらに、通常のインターネット回線を使用するのではなく、音声をパケットデータに変換して電話回線を利用することから、通信が混線しやすい災害時でも通信制限にかかりにくいといったメリットがあります。

なお、一般的な音声データの場合はアクセスが集中し、混線すると、電話がつながりにくくなったり、音声が止まってしまったりといった不具合が生じてしまうことから、災害時などでは正常に使用できないことも珍しくありません。

パケットデータを使用して通信を行うIP無線機の場合、混線することがほとんどないので、通信量が増える災害時でも活躍が期待できるでしょう。

通信距離が長いため

無線機と聞くと、通信距離が短いと思われる方もいるでしょう。たしかに、一般的な無線機の場合は通信距離が短かったり、使用するにあたり特別な免許や資格が必要だったりといったケースも少なくありません。

しかし、IP無線機であれば免許や資格がなくても利用できることに加え、携帯電話の電波が入るところであれば、全国どこでも通信できます。

また、1対1の通話だけでなく、グループでの通話にも対応しているので、1度に複数人とコミュニケーションを取れるのが特徴です。通信距離が長く、複数人と通話できる点から、災害時に活躍が期待できる通信手段といえるでしょう。

操作しやすいため

IP無線機は特殊な免許が必要なく、基本的には誰でも利用できるのが特徴です。さらに、操作性にも優れており、緊急時にも使い方に困らず、スムーズに使えるでしょう。

なお、IP無線機にはさまざまな種類があるので、自分に合った使いやすいモデルや機種を選ぶのがポイントです。

GPS機能があるため

ほとんどのIP無線機には、GPS機能が搭載されているので、発信者の位置情報を瞬時に把握できます。とくに混乱をまねきやすい災害時は、安否確認に時間がかかってしまい、精神的にも苦痛をともなってしまうことも少なくありません。

しかし、GPS機能が搭載されているIP無線機があれば、詳しい位置情報を確認できるので、どこに避難しているのか、どこで遭難したのかなど、可視化されるのが利点といえます。

救助隊や捜索隊に位置情報を伝えることで、迅速な救助活動を行えるといったメリットもあります。ただし、IP無線機の機種によっては、GPS機能が標準で備わっていないモデルもあるので、GPS機能の有無については事前に確認しておきましょう。

IP無線以外の通話手段は災害時に適しているのか

IP無線機を利用するメリットは理解できたものの、災害時においてほかに活用できる通話手段がないか疑問に思われている方もいるでしょう。ここでは、IP無線機以外の通話手段をIP無線機と比較しながら詳しく紹介します。

携帯電話

昨今、携帯電話を持っていない人のほうが少ないといっても過言ではないほど、非常に多くの人が携帯電話を所有しています。そのため、災害が起こったときは、まず携帯電話を使って連絡しようと思われる方がほとんどでしょう。

ただ、災害時は警察や消防などの緊急通報が優先されるので、携帯電話による発信が制限されることも珍しくありません。事実、東日本大震災発生時は、携帯電話の音声通話回線において通信が集中したことから、最大70~95%が制限されました。

一方、IP無線機はパケットデータを使用しており、東日本大震災時において、パケットデータが制限されたのは、株式会社NTTドコモで30%、KDDI株式会社で0%、ソフトバンク株式会社で0%に留まっています。

つまり、災害時においても、ほとんど通信が制限されていないのです。携帯電話の場合、通信が集中することから、制限がかかってしまう可能性が高いですが、パケットデータを活用しているIP無線機であれば、制限がかかること少なく、利用できるでしょう。

固定電話

自宅や会社のオフィスにいるときは、固定電話を使って通話しようと考える方も多いのではないでしょうか。

しかし、固定電話も携帯電話同様に、災害時においては通信制限がかかってしまう可能性があります。実際、東日本大震災発生時は、最大80~90%の制限がかかっていました。

PHS

PHSは、基地局が停電してしまうと使えなくなってしまう可能性があります。たとえば東日本大震災発生時は、地震と停電の影響によってPHS回線が利用できなくなり、通話することができませんでした。なお公衆PHSは2023年3月31日に音声通話・データ通信サービスがすべて終了しております。

衛星電話

衛星電話は、周りに障害物が少なく、広々とした屋外であれば有効的な通話手段といえます。ただ、天候によっては、通信障害が発生したり、正常に利用できなかったりするケースも少なくありません。

また、IP無線機にように、グループ通話ができないことから、1対1で何度も通話しなければならないのがデメリットといえるでしょう。

MCA無線機

MCA無線機は、MCA基地局を介して通信することから、MCA基地局からの電波が届く範囲でしか利用できません。

また、衛星電話と同様に、周りにビルやマンションなどがあり、建物が多い都市部では、通信が遮られてしまい利用できないことがあるでしょう。

なお、MCA無線は、遠距離用業務無線と見なされることがあり、使用するためには免許が必要になります。

免許を取得するには、総務省総合通信局に必要書類を提出しなければならず、実際に免許を取得するためには約3週間の時間がかかってしまうことを留意しておきましょう。

IP無線を災害時に使用する際の注意点

IP無線機は、携帯電話の電波が届く範囲であればどこでも利用できるのが特徴で、災害時でも活用が期待できるでしょう。ただ、IP無線機を災害時に使用するときは、いくつか注意しなければならないことがあります。

たとえば、IP無線機を使用するには通信量がかかります。IP無線機はパケットデータを利用することから、パケット通信費が必要になるので、使用するたびに通信料金を支払わなければなりません。

また、どのサービスを選ぶかによって費用は異なるものの、災害時の使用以外にも利用料がかかります。そのため、使用していなくても毎月の固定料金がかかってしまいます。

さらに、IP無線機を使用するには、専用の端末を所有しておく必要があり、端末本体の購入費やレンタル料がかかることを留意しておきましょう。購入費用やレンタル料は、IP無線機のメーカーや機種、機能によって異なります。

そのほか、災害時において、必ず通信制限が発生しないわけではありません。実際に東日本大震災発生時は、一部の通信回線において約30%の通信規制がかかりました。

とはいえ、固定電話や携帯電話、PHSなどと比べると、通信制限の割合が非常に少ないことから、緊急時であっても十分に活用できる可能性が高いことがわかるでしょう。

災害時に求められるIP無線の条件

さまざまなメリットがあるIP無線機ですが、種類がたくさんあることから、どれを選べばよいのかご不明な方も多いでしょう。ここでは、災害時に活躍が期待できるIP無線機の条件を紹介します。

IP無線機を選ぶときは、まず防水・防塵タイプかどうかを確認しましょう。災害時は、端末が水に濡れたり、ほこりやゴミに埋もれてしまったりするケースも想定できます。

そのため、防水や防塵性が高い端末を選ぶのがポイントです。また、端末本体が頑丈に作られており、耐久性が高いものを選ぶといいでしょう。

そのほか、手に持ちやすいサイズかどうかや、長時間持ち運んでも苦にならない重さかどうかも重要です。災害時は、長時間・長期間、IP通信機を持ち運ぶことがあるでしょう。そのため、できるだけ軽く、持ち運びやすいサイズの機種を選ぶのがポイントです。

また、IP無線機に備わっている機能を確認することも大切です。たとえば、GPS機能が付いていれば、発信者の位置情報が詳しくわかるので、災害時も活用できます。機種によってはGPS機能がオプションとなっているものもあるので、事前に確認しておきましょう。

デュアルSIMに対応しているかもチェックポイントとなります。デュアルSIMに対応していれば、片方の回線の通信に制限がかかったとしても、もう片方の回線を使って通話できるので、災害時にも活躍が期待できます。

まとめ

今回は「IP無線機が災害時に活躍が期待できる理由」をテーマに、IP無線機の特徴の紹介に加え、ほかの通話手段との違いについても解説しました。

IP無線機は、音声データをパケットデータに変換して通信することから、通常の音声回線を介さずに通話でき、災害時においても通信制限がかかりにくいのが特徴です。

また、ほかの無線機とは異なり、特殊な免許や資格がなくても利用でき、災害時にも活躍が期待できるでしょう。万一の災害時に備えるために、IP無線機の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

どのような機種がいいか、どのサービスを選べばいいかご不明であれば、ぜひ一度株式会社ジャパンエニックスにご相談ください。ニーズに合った最適なご提案をいたします。