デジタル簡易無線は、簡単な手続きで使用できる無線システムとして広く利用されており、通信性能が高く、5~10kmの広い範囲で通信が可能です。

特定省(小)電力トランシーバーよりも安定した通信が可能なため、警備無線や音楽やスポーツイベント、さらには個人でのレジャー目的まで、幅広く活用されています。

この記事では、デジタル簡易無線の特徴、免許局と登録局の違いや比較について解説しています。また、活用シーンについても紹介していきますので、デジタル簡易無線の導入を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

デジタル簡易無線とは

デジタル簡易無線は、デジタル通信方式を採用し、通信品質を向上させた無線機です。主な特徴は、クリアな音声とノイズの少なさです。

また、盗聴や傍受を防ぐ高いセキュリティ性と、チャンネル数の多さも特徴といえます。さらに、デジタル簡易無線は無線従事者の資格を必要としません。

従来のアマチュア無線機等では、専門的な知識や総務省が認定する免許、運用資格などが必要でした。しかしデジタル方式の導入にともない、平成20年に新たなジャンルとして登録制も追加制度化されました。

登録制が制度化されたことで、不特定多数との通信が可能になり、高所や上空でも無線機を使用できるようになりました。また、利用形態に応じて免許局と登録局を選択できるようになったことで運用の幅が広がり、使い勝手が向上しています。

最大5~10kmの通信距離がある

デジタル簡易無線は、高い通信出力を備え、5~10kmの広い範囲で安定的に無線通信が可能です。一方、特定小電力トランシーバーといったトランシーバーやインカムは、通信距離が100~200m程度であり、送信出力も0.01Wと比較的小さくなっています。

これまでは、小規模なイベントや登山、ツーリングなどには適していましたが、大規模なイベントや業務用途には不向きでした。

しかし、特定小電力トランシーバーでは通信が困難だった場所でも通信が可能となります。そのため、広い範囲での使用や大規模なイベントなど、業務用途としての利用が期待されています。

機種や場所によって通信距離は異なる

デジタル簡易無線は通信可能な出力が高く、遮蔽物が多い場所でも比較的安定した通信が可能ですが、機種や使用場所によっては信号の安定性に影響を受けることがあります。たとえば、同じ建物内でも、1階から10階以上離れた場所への通信は不安定になることがあります。

また、高層ビルが集まる都市部など、電波を遮る障害物の多い場所でも通信に影響が出ることもあります。そのため、機種のスペックや通信場所の環境状態をよく理解し、適切に利用する必要があります。

デジタル簡易無線の免許局と登録局の違い

免許局と登録局の2種類が存在し、使用目的や無線機の種類によって使い分けることがあります。違いとしては、以下の4つが挙げられます。

・キャリアセンスの有無
・免許の要否
・レンタルの可否
・レジャー用通信の利用可否

これらの違いについて解説します。

免許局とは

免許局とは、法人向けの登録申請機関で、業務用として利用することを目的としています。個人で申請することはできず、主に企業や団体が業務連絡に利用するものです。

たとえば、企業が社内のほかのスタッフと連絡を取りたい場合や、イベントなどの団体が無線通信を利用して共同作業を行いたい場合などには、免許局で申請する必要があります。

免許局は、登録局に比べてチャンネル数が多くなっています(2023年6月現在)。周波数も差別化されていることから、混信が少ないという特徴があります。そのため、電波が混雑している場所でもスムーズな通信が可能です。

登録局とは

登録局は、業務用としてだけでなく、個人でも申請できる無線機です。申請者以外の人も利用でき、個人のレジャーをはじめ、幅広い用途での利用を目的としています。

登録局は比較的新しく、平成20年に制度化されました。それまでは簡易無線局は業務用に限定されていましたが、登録局の設置により制度を簡素化し、一般ユーザーにも開放することを目的としています。

登録局のメリットは、登録と開設届を提出すれば、免許申請不要で高出力の無線機を使用できることです。また、登録者だけでなくほかの人も利用することができるため、グループでのレジャーや野外活動などに適しています。(別途運用届の提出が必要)

ただし、チャンネル数が少なく、混信しやすいというデメリットがあります。そのため、登録局を持つ無線機には、キャリアセンス機能の搭載が義務付けられています。

キャリアセンス機能とは、送信を開始する前に他の無線局が使用していないか確認し、他無線機が同一チャンネル(周波数)を使用中であれば、同一チャンネル(周波数)での送信を行わないことで干渉を回避する機能です。

免許局と登録局を比較

使用目的や無線機の種類によって使い分ける免許局と登録局には、いくつかの違いが存在します。以下でそれぞれの違いを説明します。

通信距離

免許局と登録局の間では、通信距離においてはとくに違いはありません。どちらの局でも、市街地などの遠くが見通せる場所では最大10km程度の通信が可能です。

周波数

周波数の使用に関して、免許局と登録局では異なる周波数帯が割り当てられています。

<免許局>
・デジタルVHF:154.44375MHz~154.55625MHz
・デジタルUHF:467.0000MHz~467.4000MHz

<登録局>
・デジタルUHF(陸上用):351.2000MHz~351.38125MHz
・デジタルUHF(上空用):351.16875MHz~351.19375MHz

免許局は、VHF154MHz帯やUHF465MHzなど、複数の周波数に対応できるのに対し、登録局はUHF351MHz帯のみに限られます。(2023年6月現在)

免許

使用する際の免許については、免許局と登録局では異なる手続きが必要です。免許局では、使用する無線機ごとに免許を取得する必要があります。

一方、登録局では免許は必要ありませんが、初めて使用する際には登録申請書と開設届の提出が必要となります。増設する場合は、改めて登録局に開設届を提出しなければなりません。

申請自体は、総務省の全国各地にある総合通信局、または沖縄総合通信事務所へ申請書類と開設届けを提出することによって使用可能になります。申請期間は15日程度の審査を経て、問題がなければ登録状が郵送されてきます。

チャンネル

チャンネル帯は、免許局と登録局で異なります。(2023年6月現在)

<免許局>
UHF帯:65チャンネル
VHF帯:19チャンネル+9チャンネル(※音声を除く9チャンネル)

<登録局>
UHF帯:30チャンネル
上空用:5チャンネル

通信用途

通信用途について、免許局は主に業務用通信を対象としています。一方、登録局は業務用通信のほかに、レジャー用通信としても利用可能です。

レンタル

平成20年4月の電波改正法で、キャリアセンスが義務化されている登録局のみ許可を出しています。免許局は業務用としているため、アナログ及びデジタルともにレンタルは許可されていません。免許局の無線機を個人でレンタルすることは違法となります。

レンタルの場合は、登録人以外の者による運用と位置づけられ、登録人は事前と事後に届けでの手続きが必要となります。

印紙代

印紙代には、電子申請と紙申請の2種類があり、電子申請の方がより低額で申請できます。ただし、免許局と登録局で異なる料金体系が存在します。

免許局では、使用する電力に応じて料金が異なります。出力が1W以下の場合、電子申請は2,550円(局数ごとにかかる)で申請できます。

一方、紙申請の場合は3,550円です。4Wまたは5Wの場合、電子申請は3,050円(局数ごとにかかる)で申請できますが、紙申請は4,250円です。

登録局では、包括登録と個別登録によって料金が異なります。包括登録の場合、電子申請は2,150円、紙申請は2,900円です。一方、個別登録の場合、電子申請は1,700円、紙申請は2,300円となります。

費用を抑えたい方は、免許局と登録局ともに電子申請を選択することをおすすめします。

デジタル簡易無線の活用シーン

デジタル簡易無線の活用シーンは、主に以下の4つです。

・イベント運営
・物流倉庫
・アウトドア

それぞれについて詳しく解説します。

イベント運営

イベント運営などの多数のスタッフを必要とするイベント現場では、デジタル簡易無線は広く活用されています。お祭りや音楽フェス、スポーツイベントは、設営から運営、警備など多くのスタッフを必要とします。

多人数での同時通話や、運営側から連絡事項を必要とするときに大きく活躍するでしょう。複数のアルバイトを雇うなどの際は、登録者以外でも使用できる登録局がおすすめです。

物流倉庫

近年では、物流倉庫の通信でもデジタル簡易無線が広く活用されています。大型物流倉庫では、数多くの荷物が複数階にわたって管理されていることがあります。

また、冷蔵や冷凍庫などの締め切った空間では声が通りにくいため、通信手段が重要です。デジタル簡易無線を使用すれば、これらの問題を解決することができます。

とくに、フォークリフトなどの運搬車では、効果的なコミュニケーションが必要です。安全な管理を実現するためには、適切な連絡手段が不可欠です。デジタル簡易無線は、運搬車間の連携や安全確認において重要な役割を果たします。

アウトドア

個人でも登録が可能な登録局では、アウトドアやレジャーの目的での使用も許可されています。登録局の申請を行えば、登録者以外でも使用が可能です。

少人数の場合は、手軽な特定小電力トランシーバーが適していますが、大人数でのグループ行動や、携帯電話の電波が届きにくい山間部などでのキャンプやスキーには、デジタル簡易無線が役立ちます。

まとめ

デジタル簡易無線は、高い通信性能と最大5~10kmの広範囲な通信距離を持つシステムです。警備やイベント、個人のレジャーなど、幅広い用途で活用されています。クリアな音声と秘匿性があり、無線従事者の免許は不要です。

ただし、機種や使用する場所によって通信距離や安定性に差があることに留意が必要です。免許局と登録局は使用目的や無線機の種類に応じて使い分けられます。免許局は法人向けで業務目的に使用され、通信チャンネルが多く混信が少ない特徴があります。

一方、登録局は個人や団体が利用でき、チャンネル数は少なく混信しやすいですが、免許は不要です。周波数帯も免許局とは異なるため、注意が必要です。

それぞれの特徴を理解し、状況に応じて使い分けることが効率的なデジタル簡易無線の活用ポイントです。デジタル簡易無線の導入を検討している方は、ぜひ一度ジャパンエニックスにご相談ください。