突然ですが、皆さんはトランシーバーを使用した経験はありますか?スマートフォンを一人一台持っていることが当たり前になりつつある現代でも、通信制限の影響を受けないことから、情報伝達手段の一つとして重宝され続けています。イベント会場のスタッフや警備員などは、今でも現地情報のやり取りをトランシーバーで行っています。

そんなトランシーバーには海外製、そして日本製のものがあります。国内外での利用や持ち出し、持ち込みに大きな制限をかけられています。その知識を持たずにトランシーバーを使用することは、使用者に対して様々なリスクをもたらすため、注意が必要です。そこで今回は、海外製のトランシーバーと日本製のトランシーバー、海外に持ち出す際の知識や注意点について紹介します。

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海外製トランシーバーの使用が許可されていない理由

海外で製造されたトランシーバーなどの無線機を日本で使用することは、法律で禁止されています。万が一、通信に利用してしまった場合、法律で定められている電波法に違反することになるので、罰金や懲役などを課される可能性も否定できません。

しかし、海外で作られた無線機を使用してはいけない理由は何なのでしょうか。ここではその理由について取り上げていきます。

使用できるチャンネルが限定されてしまうため

海外で作られたトランシーバーの中には、日本で製造された製品と規格が違うので、出力が大きく異なる製品もあります。たとえば、日本で作られたトランシーバーの最大出力は一般的に5W程度ですが、5W以上の出力を有している製品は海外では珍しくありません。

出力が強いことで通信が可能な距離が伸びるというメリットがありますが、使用可能な周波数が独占されるので、通信できるチャンネルが制限されてしまいます。場合によっては、複数の通信が入り乱れてしまい、複数人と情報のやり取りができるという、トランシーバーの強みの一つが打ち消されることになるのです。

さまざまな製品の誤作動に繋がる恐れがあるため

リモコンを使用するタイプの製品や電子レンジなどの家電には、トランシーバーと同じようにそれぞれ周波数が割り当てられています。では、もし海外で作られた無線機が使用している周波数と、ほかの製品の周波数が一致してしまったら、どうなってしまうのでしょうか。

その場合、海外で作られた無線機が発する周波数の影響を受けた製品が誤作動を起こし、最悪の場合、重大な事故に繋がることもあります。そのため、海外で作られた無線機の利用は制限されているのです。

重大な被害や事故を招く恐れがあるため

電波は国によって周波数、そして利用目的が決められています。そのため、海外で作られた無線機で利用可能な周波数が、日本国内では別の目的で使用されている周波数だった、という事例も珍しくありません。

では、もし周波数が他の無線と一致してしまったら、一体どうなるでしょうか。万が一、警察や消防士が使用している無線と一致した場合、事故現場や災害現場で指揮系統の機能不全を起こし、取り返しがつかない重大な問題に繋がる可能性も否定できません。違法な電波を使用した通信は、絶対にやめましょう。

海外製トランシーバーの見分け方

ここまで海外製のトランシーバーを使用してはいけない理由を説明してきましたが、電波法に抵触してしまうタイプの製品と知らずに使用してしまったという事例もあります。せっかく知識はあるのに、自分が所有している無線機が、果たして日本で使用すると違法扱いになるのか、それとも特に問題がないものなのか知る術がなければ、こうしたトラブルを回避することができません。

海外製を含む、通信を行うことで違法になってしまう機材かどうかを見分けるために、一番大事なポイントは「技適マーク」の有無をきちんと確認することです。「技適マーク」はトランシーバーを含む無線機に付いている認可マークで、海外製品でもこの印があれば問題なく国内での通信に活用することができます。逆に日本で製造された製品でも、このマークがなければ違法通信とみなされるので、商品を購入する際は要チェックです。

海外製トランシーバーの商品説明に記載されている文言

日本国内で使用できない海外製の無線なのか否か、上記で説明した方法以外にも見分けるポイントがあります。それは、製品販売時の商品説明です。

たとえば「海外旅行先でのやり取りに最適」や「日本国内では利用できません。実験用の製品です」という文言。これは明らかに日本国外での活用を想定している説明です。

それから、通信距離の説明に「メートル」ではなく「マイル」を使っている商品。マイルは日本ではほとんど使用されない単位なので、高確率で海外の製品だと判断できます。

また、「格安」を謳い文句にしている、まとめ売りの通信機器にも注意しましょう。日本国内で販売されている無線機器の相場は10,000円から30,000円ですが、海外で生産された商品の場合は数千円程度で購入可能です。数字の桁が一つ違うので興味を引かれる人も多いですが、海外製の通信機なので当然使用すれば法律違反になります。

ほかにも海外で生産された商品説明によく使われている文言はあるので、購入前にきちんと調べる癖をつけておきましょう。

日本国内で違法となる海外製トランシーバーの規格

Amazonや楽天に代表されるオンラインショップの発展によって、これまで入手するのが困難だった海外の商品を簡単に購入することができるようになりました。その一方で、日本の規格外の無線機が流入するなど、新たな問題も起きています。

すでに説明した通り、海外で生産された通信機器には国内の重要無線と同じ電波を拾っている製品もあり、安全面の懸念から通信は禁止です。万が一、海外の無線機を活用した通信をしたことが判明すれば、違法行為として扱われます。

そんな国内で使用することが明確に禁止されている代表的なトランシーバーの規格は、以下の通りです。

FRS

まず、一つ目はFRS(Family Radio Service)です。日本で生産されている無線機と比較すると、一台あたりの価格が安く、さらに通信可能距離も長いのが特徴。また、利用できるチャンネルの数も多いため「一台所有すると便利」という触れ込みがなされています。

しかし、災害時に重要な放送を行う防災行政無線や放送事業用に活用されている無線に影響を与える可能性が指摘されているため、国内で利用することは禁止です。もちろん、生産国のアメリカで通信する分には問題ありません。

GMRS

二つ目はGMRS(General Mobile Radio Service)です。こちらもFRS同様、国内で生産されている機器よりも安価で通信距離が長いのが特徴。生産国のアメリカでは免許を所有したうえで、機器を使用することが認められていますが、海外の規格である以上国内での活用は禁止です。たとえ免許を持っていたとしても、違法行為として扱われます。

UHF-CB・PRS

3つ目はUHF-CB(UHF-Citizen’s Band Radio )、およびPRS(Personal Radio Service)です。これらの規格の製品はオーストラリア、ニュージーランドでの使用が認可されていますが、国内で通信することはできません。

出力は5Wで日本の無線機を超えており、かつ活用している電波、周波数が日本ではテレビ放送に使用されているものと同じなので、通信した場合は重要無線の妨害に繋がる可能性があります。

日本製トランシーバーを海外で利用する際の注意点

日本国内で海外製の無線機で通信を行うのはご法度です。同じく、日本製の機器を活用した通信を、国外で行ってはいけません。これは日本の電波法に相当する法律や条例が、日本以外の国にも存在しているからです。

とくに海外の場合は、電波や通信機器の問題は国防の問題と同一視されており、日本以上に強く意識されています。無線とは異なりますが、同じ通信機器関連の問題として、アメリカやカナダが中国製の通信機器の利用を禁止したことは記憶に新しいでしょう。通信機器の問題を放置した結果、国民の個人情報や国家の機密情報が海外に流出する可能性もあるからです。

たとえ日本の規格の製品を使用するにあたって、何も悪意を抱いてなかったとしても、その国の司法に則り厳しい罰を受けることになります。国外では、日本で生産された無線機器の活用はやめておきましょう。

海外でトランシーバーを利用するには

では、国内で生産されたトランシーバーを含む無線機器は、国内以外で活用することは不可能なのでしょうか?きちんと条件を整えることができれば、国外でも国内産の無線機を活用した通信を行うことは可能なのです。

ここでは国外で無線機を利用するために守るべきポイントについて紹介します。

利用する国の電波法に対応したものをレンタルする

まず、海外でトランシーバーを使用するのであれば、自分で購入した機器を持ち込むのではなく、あらかじめ国内のレンタルショップや、無線機を活用した通信を行う国のレンタルショップでトランシーバーをレンタルするのが、一番確実で安全です。多くの人に無線機を貸し出すのであれば、当然電波法をクリアしている製品を貸し出さなければお店の信用問題にも関わります。そのため、その国の規格に合った無線機を借りることが可能です。

もちろん、全てのお店が規格に合った無線機を提供してくれるとは限りません。安価な規格外の機器を大量に購入し、それをレンタル商品として扱っているお店もあるので、事前に商品をレンタルするお店が問題ないか見極めてから借りるようにしましょう。

また、無線機器を持ち込む場合は、入国審査のときに何のために使用するのか説明が求められる場合もあります。事前に使用目的が説明できるように準備しておくとよいです。

利用する国の販売店で入手する

もし、長期間にわたって国外に滞在し、トランシーバーを使用するのであれば、思い切って現地の販売店で購入するのも手です。トランシーバーなどは専門ショップで購入できるほか、現地の大型スーパーや電気屋でも取り扱っています。ただし、滞在先で確実に入手できる保証はないので、あらかじめ目ぼしいお店をピックアップしてから行くか、国内で事前に用意するのが安全です。

また、海外のお店で無線機を購入するのであれば、必ず商品に付随している注意書きや説明書を確認しておきましょう。その国の言葉で記されたユーザーガイドや保証書、また規格をチェックすることで、思わぬトラブルに巻き込まれることを防げます。

利用する国の電波法も把握しておく

トランシーバーなどの無線機器を使用する国の電波法は、その国に滞在する前にしっかりチェックしておきましょう。当然ですが国によって電波法の規約は違うので、見落としが発生しないように注意が必要です。

また、電波法に限った話ではありませんが、その国の法律が滞在直前に変更された、ということも珍しくありません。使用できる機器の制限が増える、逆に制限が緩くなるなど、ルールが変更されてもすぐに対応できるように、出発するまで自分で最新情報の収集を怠らないようにしましょう。

海外で利用できるトランシーバーの規格

滞在先の国や地域によって、通信可能なトランシーバーの規格は異なります。たとえば、北米や南米地域でも使用できる無線機の規格はFRSです。北米では一般的に使用されている規格で、現地でも入手しやすく扱いやすいので迷ったときはFRSを選びましょう。

ヨーロッパ諸国やインドではPMR446(Private Mobile Radio)が使用可能な規格ですが、ノルウェーやスウェーデンなど北欧の一部では規格外となっており、その代わりに認可されている規格がKDR444です。これらの規格は無線機器のレンタル、購入時にパッケージなどで確認できるので、きちんと調べておきましょう。

まとめ

以上、海外製のトランシーバーと日本製のトランシーバーを海外に持ち出す際の知識についてまとめました。通信技術が発達した現在でも、複数人で話せる、災害時にも使用できるなど、無線機の強みは健在です。

一方で、無線機に関する法律、電波法や使用できる機器に対する知識については十分に認知されていません。便利な道具だからこそ、使用するにあたってきちんとルールを把握することが大切です。

そのためには国内だけでなく、海外で無線通信を行う際にも現地の法律を知り、そのうえで自分たちが使用できる規格の機材をきちんと選択することが求められます。
国内で使用する無線機について詳しく知りたい場合は、ジャパンエニックスまでお問い合わせください。

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