無線通信を扱う免許は無線従事者資格といい、いくつか種類があります。種類によってそれぞれ扱える機器や範囲が異なるため、把握しておくべきです。

種類を把握すれば、適切な免許を取得できるとともに、無線通信に関しての理解も深まります。今回紹介する内容を参考に、無線免許について正しく理解しておきましょう。

この記事では、無線免許の内容や種類、メリットなどを解説します。最後には取得方法も解説しているため、ぜひ参考にしてください。

無線従事者資格とは

無線従事者資格は、無線通信を行うために必要な国家資格です。総務省が管轄しており、8種類、23の資格が存在します。航空機や船舶、防災無線などの分野で無線を使用する場合は、この資格を保有していなければなりません。

資格なしで機器を使用すると、電波法違反になる可能性があるため、注意が必要です。ちなみに、無線通信は一般の人々が日常的に利用している携帯電話やスマートフォンにも使われていますが、操作が簡単な無線設備については資格はいりません。

無線従事者資格の種類

無線従事者資格は複数存在しますが、8つの種類に分けられます。それぞれ扱える機器が異なるため、違いを把握しておくべきです。ここでは、無線従事者資格の種類や内容を解説します。

総合無線通信士

総合無線通信士は無線通信の技術や知識を総合的に持ち合わせており、あらゆる無線設備を扱える国家資格です。特定の分野に特化しているわけではないため、資格を取るためには幅広い知識が必要になります。

階級は、一級から三級まで分かれています。無線従事者資格のなかでも、第一級総合無線通信士は最も難しい資格です。

総合無線通信士の資格を取るとさまざまな機器を扱えるようになりますが、主に船舶や航空機の無線設備を扱います。そのため、あらゆる職種で重宝される資格です。

海上無線通信士

海上無線通信士は、主に船舶における無線通信を担当する国家資格です。この資格を保有していると、海上保安庁で活躍できるケースもあります。

階級は一級から四級まであり、資格の種類によって操作できる無線機の出力が異なるのが違いです。原則的に四級から一つ階級が上がるごとに、扱える無線機の範囲が広くなります。海岸局や船舶局など、船舶関連の業種では必須の資格といえます。

海上特殊無線技士

海上特殊無線技士は、船舶における特殊な無線通信に携わる国家資格です。種類としては一級から三級、レーダー級があります。この資格を保有していると、測位や航法に必要なレーダーや国際VHF波、無線電話などを扱えます。

海上無線通信士と比べると範囲は限定的ですが、より専門的な機器の操作が可能です。船舶の船長や航海士に必要な資格といえます。

航空無線通信士

航空無線通信士は、航空機における無線通信を担当する国家資格です。この資格に関しては階級がなく、試験に合格すれば航空機局の無線設備が操作できます。

航空機には地上との通信や、航空機同士の通信などさまざまな種類の無線機があります。そのため、整備員や航空管制官、パイロットなどに求められる資格です。試験には通信や工学に加え、英語も出題されます。そのため、継続的な勉強が必要です。

航空特殊無線技士

航空特殊無線技士は業務用の航空機ではなく、個人で所有する自家用ジェットや農薬散布用・報道用の航空機との通信が可能になる資格です。

操縦は国内に限られてしまうため、主に個人のアマチュアパイロットや航空会社以外の企業が取得します。ただ、試験科目は航空無線通信士と比べて少ないため、合格はしやすいです。

この資格はあくまで自家用の飛行機や小型飛行機を対象としているため、事業用の航空機を操縦する場合は、航空無線通信士の資格を取得しましょう。

陸上無線技術士

陸上無線技術士は、地上の無線通信に関する国家資格です。一級と二級があり、テレビやラジオなどの放送局、さまざまな移動局との通信ができるようになります。

第二級陸上無線技術士は、比較的小さい無線設備を扱える資格ですが、大規模な放送局の無線設備は扱えません。

一方、第一級陸上無線技術士になると、放送局を含む陸上にある無線設備を扱えるようになります。そのため、第一級陸上無線技術士は陸上無線関係のなかでも最も難しい資格です。

この資格を保有していると、放送局や無線機を扱うメーカーのほか、情報系の先生として学校でも重宝されます。

陸上特殊無線技士

陸上特殊無線技士は、特定の無線通信システムや機器に特化した技術を持つ資格です。具体的には、タクシー無線や陸上自衛隊の無線業務などが挙げられます。

階級は一級から三級まであり、一級になると多重無線設備を使用した固定局などの無線設備も扱えるようになります。

陸上特殊無線技士は陸上無線技術士と比べると、扱える無線設備に制約がありますが、難易度は易しい資格です。

アマチュア無線技士

アマチュア無線技士とは主に個人が取得する資格で、アマチュア無線局の無線を使用するために必要な資格です。趣味としてのドローンの操縦や非常時における防災や救援活動に役立つため、取得する方がいます。

階級は一級から四級まであり、試験内容は無線工学と法規です。それぞれの級によって、送信出力や使用できる周波数帯が異なります。

注意点として、アマチュア無線技士はあくまで個人での使用を前提としているため、業務で使用はできません。業務で機器を使用する場合は、必要な各資格を受験しましょう。

無線従事者資格を取得するメリット

無線従事者資格を取得すると該当分野の機器を扱えるようになりますが、そのほかにもさまざまなメリットがあります。ここでは、無線従事者資格を取得するメリットについて解説します。

専門的な知識まで習得できる

資格を取るためには、試験を受ける必要があります。その過程で、無線通信に関する専門的な知識を習得可能です。無線通信の理論や実務技術、通信法規などについて学習でき、基本的に一般の方は知らない内容ばかりです。

知らなくてもいい知識と思うかもしれませんが、IoT(Internet of Things)やAIの発達など、今や無線通信は一般社会にも浸透しています。そのため、無線通信に関して正しく深い知識を身につけることは、今後さらに重要になってきます。

また、無線通信に関しての知識は個人的な興味や趣味としてだけではなく、将来のキャリアアップにもつながるためおすすめの資格です。

他の資格の受験科目を免除できる

無線従事者資格は、無線通信に関して一定レベルの技術や知識を持っていることを証明する資格です。そのため、保有しているとほかの資格試験において、一部の科目や受験科目を免除される場合があります。

たとえば、第一級総合無線通信士を保有していると、電気通信主任技術者の資格を受験する際の電気通信システムの試験科目が免除されます。また、工事担任者の資格を受験する際は、電気通信技術の基礎の科目を免除可能です。

このように、ほかの資格試験においても役立つケースがあります。徐々に難しい資格に挑戦していけば、知識も深まり科目免除も受けられるためおすすめです。

進学や転職の際に役立てられる

無線従事者資格を保有していると、進学や転職の際に有利に働くケースがあります。たとえば、情報工学や電子工学を学ぶ大学に進学する場合、入学選考で優遇を受けられる可能性があります。

また、無線通信を扱う企業での就職や転職においても、資格を保有している事実は大きなアドバンテージです。具体的には、タクシー会社や電気通信事業を扱っている会社で役に立ちます。

実際、就職後に資格試験合格に向けて勉強するケースもあり、あらかじめ資格を保有していればすぐに現場で活躍できる可能性もあります。進学や転職を有利に進めたい場合には、おすすめの資格です。

資格を活かして事業を行える

個人でも無線従事者資格を活かして、事業を行えます。総務大臣の登録を受けて登録検査等事業者になると、無線設備などの点検ができるようになります。必要書類を総務大臣に提出すれば、登録申請は可能です。

ほかの資格では、持っているだけでは事業が行えず、形だけになってしまう資格も存在します。知識だけでなく実際に事業を行えるのは、無線従事者資格のメリットといえます。

無線従事者資格を取得する方法

無線従事者資格を取得する方法としては、下記の4つが挙げられます。

・国家試験に合格する
・養成課程を修了する
・学校で無線通信に関する科目を修めて卒業する
・一定の資格・業務経歴を得る

まず、国家試験に合格する方法です。国家試験は資格ごとに年数回実施され、日程は日本無線協会のHPから確認できます。試験内容は基本的に無線通信に関する知識や技術を問うものですが、各資格によって異なるため確認しておきましょう。

養成課程を修了することでも、無線従事者資格を取得できます。養成課程とは、総務大臣が認定した団体が行う講習です。養成課程を受講して修了すれば、国家試験を受けなくても無線従事者資格を取得できます。

また、無線通信の授業を扱う高等学校や高等専門学校、大学を卒業すると、一定の無線従事者の資格を保有できます。無線通信について体系的に学べるため、知識がない状態から学ぶ場合は学校へ通うのがおすすめです。

最後に、一定の資格・業務経歴を得る方法もあります。すでに無線従事者資格を保有している人が、一定期間無線局の業務に携わった場合、上級資格を取得可能です。

このように、無線従事者資格を取得する方法は4つ存在します。それぞれの状況で適した取得方法は異なるため、どの方法で資格を取得するか検討しましょう。

まとめ

無線従事者資格は総務省が管轄している資格で、無線通信を行うために必要です。無線従事者資格はいくつか種類があり、それぞれ扱える機器が異なります。階級ごとでも、扱える無線設備の範囲が変わってきます。

無線従事者資格の種類は、下記の8つです。

・総合無線通信士
・海上無線通信士
・海上特殊無線技士
・航空無線通信士
・航空特殊無線技士
・陸上無線技術士
・陸上特殊無線技士
・アマチュア無線技士

無線従事者資格を保有していると、ほかの資格の受験科目を免除できたり進学や転職の際に役立てられたりするメリットがあります。

無線従事者資格を取得するには、国家試験に合格したり養成課程を修了したりする必要があります。取得には時間がかかるため、取得方法はあらかじめ確認しておくのがおすすめです。

実際に資格を取得した後は、無線機が使えるようになります。ただ無線機の導入には費用がかかるため、レンタルでの使用がおすすめです。お試しでも利用可能なため、まずはレンタルでの使用を検討してみてください。