無線機だけではなくWi-FiやBluetooth、スマホでの通話など、今日の私たちの生活を根本から支えているシステムは電波の正常な運用のもとでその力を発揮しています。

電波はデリケートなツールであるため、電波法によってその利用方法が厳しく定義されています。実際に、電波を利用するときには総務大臣からの免許を受けなければなりません。

ルールを知らずに電波を利用したサービスを提供すると、法律違反として罰則が科せられる可能性もあります。

そこでこの記事では、電波を使う際のルールをしっかりと把握できるよう、電波法について徹底解説していきます。

電波法の基本知識

まず始めに、電波法について解説していきます。

電波法とは

電波法とは、電波の公平かつ能率的な利用の確保を通じて公的利益の拡大を目指す法律です。

1950年に施行された法律で、総務省を中心として電波の管理を徹底して行い、電波の効率的な利用を促しています。その他にも、無線局の開設や秘密保護についての取り決めも規定しています。

また、電波法以外にも電波に関する規則が定められています。くわえて、国家間でもITU検証や条約による電波に関する取り決めがあり、主に国際電気通信連合(ITU)が音頭をとって国際レベルでの取り決めを実施しています。

このように、さまざまな取り決めを実施して電波の使い方についてのルールを規定することで、日常生活の中でトラブルなく電波を利用できます。

電波法の目的

電波法の目的は、電波の公平かつ能率的な利用の確保にあります。

スマホやWi-Fiの普及化により電波は身近なものとなっている一方で、デリケートな一面があります。実際、同じ周波数の電波を同時に使うと、正しく通信できなくなる恐れがあるのです。

そのため、電波の使い方にルールを設けなければ、多くの人が同時に電波を快適に利用するのが難しくなってしまいます。こうした事態を避けるために、電波法は制定されているのです。

電波法は早い者勝ちや利用者の規模による電波の利用格差をなくし、社会にいる全員が不便なく電波を利用できる社会を目指している法律だといえます。

電波を使用する際のルール

電波法では、電波を使用する際のルールが定められています。そこでこのトピックでは、具体的なルールの内容について紹介していきます。

無線機は技適マークの有無を確認する

電波を発する製品には技適マークの刻印が必要となっており、実際に電波法では技適マークのない製品の国内での利用が禁止されています。

技適マークは「無線機器の安心マーク」といわれているほど重要なマークであるため、無線機などを購入する際は技適マークの有無をしっかりと把握しましょう。

また、外国規格の無線機は電波妨害を発生させる可能性があるため、国内での使用が禁じられています。購入の際はこの点についてもしっかりと留意しておきましょう。

ちなみに技適マークがついていればすぐに利用が可能な機器として、PHSや無線LAN、特定小電力トランシーバが挙げられます。

無線局免許が必要となる

一般的に、電波を使用する際には技適マークだけでなく、無線局の免許が必要となります。

上記のトピックのように、技適マークのみでの利用が許可されている機器もありますが、それはあくまで「電波が著しく微弱である」といった一定の条件を満たしたものに限定されます。

そのため、携帯電話やアマチュア無線など微弱とはいえない電波を発する機器の利用を行う際には無線局の免許が必須となります。

また、免許を持たない不法無線局から発される電波は不法電波と呼ばれており、不法電波を発した場合には、罰則が科せられます。

免許を持たない電波の発信を罰しているのは、災害時の緊急通信を円滑に行うためです。

免許による電波発信の管理を行わないと、緊急時に必要な無線が使えなくなることがあります。こうした事態を未然に防ぐために、無線局免許の取得をルールとして設けているのです。

無線局免許を取得する方法

無線局免許を取得するためには、無線技師の資格取得が事前に必要です。そこでこのトピックでは、無線局免許の取得方法について解説していきます。

国家試験の受験

1つ目は国家試験の受験で、日本無線協会の無線技士試験に合格して免許の取得を目指す方法になります。資格の取得後に開局申請を行うことで免許を取得できます。

無線従事者の資格は総合、海上、航空、陸上、アマチュアの5つにわかれており、この中でアマチュア局の免許を取得したい方は、アマチュア無線技士試験への合格が必要です。

アマチュア無線技士試験は1級から4級にわかれており、初学者の方はまずは4級の取得を目指していく形になるでしょう。4級は年間を通じて試験を実施しているため、すぐに資格を取りたい方におすすめです。

ちなみに、4級を取得するとモールス符号による通信を除いた一部無線の操作が可能となります。具体的に操作できる機器は、5GHz帯のドローンなどになってきます。

そして3級や2級を取得すると、空中線電力200W以下のアマチュア局の無線設備の操作が可能となります。

さらに1級を取得すると、アマチュア局のすべての無線設備の操作が行えるようになります。

このように高い級を取得するにつれて利用できる機器の範囲も広がるため、積極的に試験を受験して無線利用の幅を広げていきましょう。

また、アマチュア局以外の陸上移動局や義務船舶局の免許取得を目指す方は、陸上無線技術士や海上無線通信士の試験を受験しましょう。

養成課程講習会の受講

2つ目は、養成課程講習会を受講して資格を取得して免許の認可をもらう方法になります。

試験の受験を行わずに、アマチュア無線技士や一部の無線技術士及び通信士の資格取得ができます。

とくに第4級アマチュア無線技士の資格は取得が容易で、合格率は95%以上となっています。法規6時間、無線工学4時間の講習会を受けて修了試験に合格すれば資格が付与されるため、気軽に受講できます。

さらに、予備知識がなくても講習と模擬試験の際にベテラン講師が丁寧に指導を行っているため、講習会の受講だけでしっかりとした知識の定着を図れます。

また、第3級アマチュア無線技士短縮コースはさらに短い法規4時間、無線工学2時間の受講で資格の取得が可能であるため、興味のある方はぜひ受講してみてください。

その他にも、第1級総合無線技術士や第1級陸上無線技術士についても養成課程講習会による資格取得が可能です。しかし、これらの資格は講習会の受講資格として高いレベルでの業務経歴が求められるため、この点について注意が必要です。

電波法に違反した場合

ここまでの解説でも触れてきましたが、電波法に違反すると罰則を科される場合があります。ちなみに電波法に違反すると、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。

電波法の違反は、法令制度に対する誤解や無線局の誤った利用による場合が多く見られます。実際に、無線機の改造や外国規格の無線機の利用、日本製の外国規格の無線機の逆輸入などによる法律違反の摘発が多くなっています。

こうした過ちによる法令違反は、法制度を正しく認知していれば確実に回避できるものです。そのため、技適マークの確認や免許の取得などの基礎的なルールをしっかりと理解して法律違反をしないように努めましょう。

免許及び登録を要しない無線局

ここまで無線局の利用にあたっては免許取得や登録が必要と解説してきましたが、一部の無線局に関してはこうした手続きが不要となっています。

そこでこのトピックでは、免許及び登録を要しない無線局について紹介していきます。

発射する電波が著しく微弱な無線局

発射する電波が著しく微弱な無線局は周りの電波に与える影響がほとんどないため、免許や登録が免除されています。

免除対象の無線局は総務省令によって定められている機器が該当し、模型類の無線遠隔操縦を行うラジコン用発振器やワイヤレスマスクがこれに当たります。

また、それ以外にも微弱無線であることを証明できれば、その機器も免除対象のものとして認められます。

証明方法は2つあり、1つが測定器を自前で用意して測定する方法と、もう1つが試験期間に持ち込んで評価を行って微弱無線であるという証明を受ける方法になります。

後者に関しては、日本自動車用品工業会や電波環境協議会が微弱無線設備登録制度を導入しているため、これらの機関に申請して微弱無線かどうかの証明を行ってみましょう。

市民ラジオの無線局

市民ラジオの無線局も免除対象となります。

26.9MHzから27.2MHzまでの周波数帯の電波において、総務省令で定められる電波を使用し、かつ空中線電力が0.5W以下で技術基準適合証明を受けた無線設備を使用したものが該当の無線局として認められています。

また、これに該当しない市民ラジオに不法市民ラジオと呼ばれるものがあり、これの利用は禁止されています。不法市民ラジオはアメリカに輸出する目的で製造されていましたが、アメリカで規格が変更されて以降は売れなくなりました。

しかし、一部のメーカーが日本では認められていないにも関わらず、国内市場で流通させていました。不法市民ラジオはきわめて強い電波を発しており、テレビやラジオの受信や船舶無線に悪影響を与えるため、手元に渡ってきたとしても使用は必ず控えましょう。

小電力の特定の用途に使用する無線局

小電力の特定の用途に使用する無線局も免除対象です。くわえて、空中線電力が1W以下になっている点や、総務省令で定める電波型式及び周波数の利用がされている点なども条件として要求されます。

この条件に該当する機器には、コードレス電話、小電力セキュリティシステム、狭域通信システムの陸上移動局、ワイヤレスカードシステムなどが挙げられます。

またそれ以外にも、比較的狭いサービスエリアにおける無線通信の需要増加に応えて、ラジオマイク用や無線呼出用の特定小電力無線局の利用も免除対象として認められるようになりました。

まとめ

スマホやドローンなど電波を発する機器の利用が広く普及している現代において、電波と関わらないときはほとんどありません。日常を振り返ったとき、電波を利用する場面は非常に多いのではないでしょうか。

しかし電波は非常にデリケートな一面もあり、適正に管理しないと多くの人が円滑に利用できる環境を整えられません。そして、その環境を整備するのが電波法になります。

電波法に規定されているルールは誰もが守らなければならないものであり、違反すると罰則となる場合もあります。意図しない違反であっても処罰の対象外とはならないため、電波を扱ったサービスの導入などを行う際は細心の注意が必要です。

もし、これから電波を発する機器を扱う機会があれば、こうした注意点に気を付けながら事業を展開していきましょう。