トランシーバー(無線機)の使い方とトラブルが起きた際の原因・対処法

通信機器の中でも、手軽に使えて便利なのがトランシーバーです。特に山間部や海上など、スマホ等携帯電話だと圏外になってしまうエリアでの通信や災害時などに活躍します。

トランシーバーは、他の通信手段が使えないような場面で用いられることも多いため、使い方やトラブル時の対応をネットで簡単に調べられないことも想定できます。

本記事では、トランシーバーの基本的な使い方や、トランシーバー利用中に起こりがちなトラブルの原因や対処法を解説します。具体的な事例もあわせて紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

トランシーバーの使い方

トランシーバーの操作は、基本的には「チャンネルを合わせてボタンを押して話す」です。メーカーや機種によって、つまみやボタンの位置などの違いはありますが、操作の大枠は各機器で共通です。

操作は具体的に下記の手順で行います。

1. 電源をオンにする
2. 音量用のつまみを右に回してボリュームを上げる
3. チャンネル用のつまみを回し、通信相手とチャンネル合わせる
4. 送信ボタンを押しながら話す

送信相手とチャンネルを合わせておけば、次からは送信ボタンを押すだけで音声を送信できる状態になります。さらにトランシーバーは携帯電話のような1人対1人の連絡ではなく、1人対複数人と通話ができる為、ボタン1つで瞬時に複数人に情報を共有できる利便性があります。

しかし、機種にもよりますが、トランシーバーは複数人が同時に通話できない「交互通話」という通話方式が一般的です。特定の通話者が送信ボタンを押し続けている間は、他の人は音声送信できません。

トランシーバーの通話方法

トランシーバーには3種類の通話方式があります。それぞれの通話方法の違いを解説します。

交互通話

トランシーバーの最も一般的な通話方式が交互通話です。

交互通話は、送信ボタンを押している間だけ自分の音声を相手に送信でき、相手の音声を受信中は自分の音声を送信できない仕組みになっており、交互に送信と受信を行う通話方式です。

交互通話型のトランシーバーでは、送信ボタンを押すことで受信状態から送信状態に切り替わります。この送信ボタンを押しながら話す機能のことを、PTT(プッシュ・トゥ・トーク)といいます。

同時通話

トランシーバーの中には、携帯電話と同じように送受信を同時にできる機能を持つものもあります。双方向で同時通話ができるため、この通話方式は同時通話と呼ばれています。

同時通話ができるトランシーバーには、送受信で異なる周波数帯を使用するためのクロスバンドと呼ばれるしくみが組み込まれています。これにより、送受信の同時通信が可能となっています。

一斉同時通話

一斉同時通話とは、多人数で同時に通話できる通話方法です。同時通話は、1対1の送受信が同時にできる方法ですが、一斉同時通話では、複数人で同時に送受信ができます。

一斉同時通話に対応している機種の場合、回線がつながっている全員が同時に通話できるため、複数人で音声チャットのような使い方ができます。物事を進行しながらリアルタイムで通話したい場合や、全体との密なコミュニケーションが必要な場合などに向いた通話方式です。

交互通話で話す際の注意点

先述の通り、トランシーバーは携帯電話の1人対1人の通信ではなく、ボタン1つで瞬時に複数人に情報を共有できる「交互通話」という通話方式が一般的です。そのため、通話には特定のルールがあり、それに則して会話することで、コミュニケーションを円滑に進めることができます。

基本的な話し方

トランシーバーは交互に通話をする為、まず自分が名乗ってから相手を呼びだし、要領よく簡潔に用件を伝えます。そのため、自分からの通話が終わったときに「どうぞ」と言うことで、こちらからの会話の終了を相手に伝えます。

大まかには下記の流れで行います。

Aさん:(送信ボタンを押す)
こちらAです。AからBさん聞こえますか?どうぞ。(送信ボタンを離す)
Bさん:(送信ボタンを押す)
はい、こちらはBです。Aさんどうぞ。(送信ボタンを離す)
Aさん:(送信ボタンを押す)
修理の進捗はどのぐらいですか?どうぞ。(送信ボタンを離す)
Bさん:(送信ボタンを押す)
7割程度です。どうぞ。(送信ボタンを離す)
Aさん:(送信ボタンを押す)
引き続きよろしくお願いします。以上。(送信ボタンを離す)

このように、始めに話している人物が名乗ります。その後に、誰に向けて話しているのかを伝えます。「どうぞ」と言って送信ボタンを離すことで、相手に通話権を渡すことを示します。話を終えるときは、「以上」と言います。

このように会話にルールを設けることで、無線の特性をカバーした円滑な通話ができるようになっています。

話す際の注意点

話し方でも述べましたが、通話の際は、最初に「誰が話しているのか」を示すのが基本です。特に複数人が利用している場合は、名乗らない限り誰が話しているのか分かりません。必ず最初に「こちらAです」のように自分の名前を名乗りましょう。

名乗った後は「Bさん応答願います」のように、誰に向かって話しているのかを明確にします。交互通話では、誰かが送信ボタンを押している間は他の人は送信できません。会話が終わったら最後に「どうぞ」と言って送信ボタンを離し、自分以外に通話権を渡すことを伝えます。

トランシーバーでの会話は、目の前に話し相手がいません。また、自分が話している間は相手のあいづちなども聞こえないことから、反応を確認しづらいのが難点です。特に、1回で伝える話が長くなると、内容の取りこぼしや取り違えにつながりかねません。話す際は、結論から伝えることや、短く簡潔に伝えることを意識しましょう。

また、送信ボタンを押してすぐは、相手に音声が伝わっていない可能性があります。一呼吸おいてから話し始める、もしくは最初に「えー」などのクッションを入れると最初が聞き取れないという事態を避けられます。

トラブルが起きた際の原因と対処法

トランシーバーを使用していると、音が急に聞こえなくなるなどのトラブルが発生することがあります。トランシーバーを利用する場面は業務内であることが多いのではないでしょうか。

いざというときに備えて、ここではトラブルごとの原因と対処法について解説していきます。

相手の声が聞こえない場合

相手の声が聞こえない場合は、機器に問題が生じている場合と、電波状況に問題が生じている場合の2パターンが考えられます。

トランシーバーの機器自体にトラブルが生じている場合、まず考えられるのがバッテリーの問題です。本体の電源がオフになっていないか、またバッテリーはきちんと接続されているか、充電が切れていないかをまずチェックしてみましょう。

次に考えられるのが、本体の音量に関するトラブルです。一番単純なのは、音量をゼロにしてしまっているというものですが、業務中に体が音量つまみに触れてしまったことがきっかけで、知らぬ間に音量が下がっているケースもありえます。まずは慌てずに、ボリュームのつまみを回してみましょう。

また、本体のスピーカーにトラブルが生じている可能性もあります。別の機器で通信してみるなど、機器同士で比べながらスピーカーの調子を確認してみるとよいでしょう。

機器に問題がない場合、チャンネルがずれてないかチェックしましょう。音量と同様に、動き回る中でつまみに当たってチャンネルがずれてしまうこともありえます。チャンネルの設定を今一度チェックしてみましょう。

混信・聞き取りづらい場合

他の電波と混信している場合、音声が聞き取りづらくなる場合があります。自分達の周りにトランシーバーを使っている人たちが他にもいる場合、人数の多さによっては混信の原因となってしまいます。

電波が混信すると、つながらなくなる、音声がプツプツ切れるなどの症状が起きます。電波の混信によって音声が聞き取りづらい場合は、他の利用者の通話が終わってチャンネルが空くのを待つか、他のチャンネルに移動しましょう。

つながらない場合

電波がつながらない場合に考えられるのが、電波の通信可能な範囲を超えてしまっているケースです。トランシーバーは機種によって通信可能な範囲が異なり、通信可能範囲を超えてしまうと、お互いの無線通信が不可能になってしまいます。

イベントなどで利用する場合、人の配置によってはトランシーバー同士の距離が大きく離れてしまうような状況もあります。このような場合は、中継器などの設置も検討しなくてはなりません。

また、最大通信距離の範囲内にもかかわらず無線がつながらないような場合は、障害物や遮へい物の影響が考えられます。無線の電波が妨げられてしまい、結果として電波が届く距離が機器の仕様以下になっている可能性があります。このような場合は、障害物や遮へい物を移動する、屋内であれば窓を開ける、中継器を設置することで改善することもあります。

電源が入らない場合

電源が入らない場合にまず疑いたいのが、電池切れです。乾電池式トランシーバーの場合は多くが、セットした乾電池が切れてしまうと使えなくなってしまいます。予備の乾電池に入れ替えてみて、動作するかどうかを試してみましょう。

バッテリー式の場合、経年劣化でバッテリー容量が少なくなってしまっている場合があります。この場合も電池式と同様に、バッテリーパックの入れ替えなどを試してみましょう。

イヤホンやマイクなどに問題がある場合

イヤホンやマイクなど、外付けのアクセサリーを使用している場合、それらの状態によってトランシーバーの音声に問題が生じていることがあります。

特にイヤホンは、接続ジャックの接触不良やケーブル内の断線などトラブルが起きやすい箇所がいくつもあります。正常に動くイヤホンと差し替えてみるなどして、トラブルを起こしているアクセサリーやその箇所を特定するとよいでしょう。

また、キーロック設定の状態も確認しましょう。キーロックとは、誤って送信ボタンを押してしまわないように送信ボタンをロックする機能のことです。送信ボタンを押して通話しても反応がない場合、キーロックによって送信ボタンが使えなくなっているケースもあります。簡単にチェックできるので、トランシーバーの調子が悪い場合は合わせてチェックしておくと安心です。

まとめ

トランシーバーを業務で利用する場合、突然の機器の不調は大きなトラブルにつながりかねません。使い方の確認とあわせて、利用前に通信品質をテストしておくとよいでしょう。

本記事で紹介した方法で不調が解決しない場合は、トランシーバー本体のトラブルが原因の場合があります。機器的な問題の場合は修理や買い替えが必要になることもあるので、お気軽に弊社へお問い合わせください。

弊社では無線機器、トランシーバーを数多く取り扱っています。ご提供だけでなく修理等のアフターフォローにも力を入れておりますので、トランシーバーの利用を検討している場合はぜひお気軽にご相談ください。