数多くある趣味の中でも「趣味の王様」とまで形容されているのが、アマチュア無線です。インターネットの普及で、通信とコミュニケーションを取り巻く環境が大きく変わった現代においても、多彩な楽しみ方を内包した趣味として愛好家に強く支持され続けています。

このように、今なお世界中で広く愛されるアマチュア無線の世界に対して「業務用無線」と呼ばれるものも存在します。これら2つは、無線通信を行うという点では同じですが、それぞれには利用にあたって取得すべき資格や遵守すべき法律、使用目的などに違いがあります。

本記事では、業務用無線とアマチュア無線の違いと、それぞれを利用するために必要な資格の取得方法について詳しく解説します。

無線通信を利用する場合は、電波法で定められた義務を守る必要があり、違反した場合は電波法違反として処罰の対象となる可能性もあります。安全かつ適法な利用のためにも、あらためて本記事の内容をご一読ください。

業務用無線とは?使用される場面

業務用無線とは、業務における情報伝達の手段として使用される無線のことをいいます。たとえばタクシーに乗ると、運転手が無線で配車センターとやり取りをしている場面を見かけます。このように、業務で用いられる無線はいわゆる業務用無線に当たり、一定のルールに則った利用が義務付けられています。

あくまで仕事で無線を使用する場合には、目的にかかわらず業務用無線と定義されます。正確には、利用する業務内容によって、警察無線や消防無線、航空無線や船舶無線、一般業務用無線、簡易業務用無線などのように細かく分類されますが、どれも業務用に該当するという意味では共通しています。

簡易業務用無線を使用する場合は、原則として無線を利用する企業が地域を管轄する総合通信局への申請を行わなければなりません。申請したのち、交付された免許のもとで無線使用が認められます。業務用無線の免許の有効期間は5年間と定められており、更新や廃止の際はその都度手続きが必要です。

無線機器をレンタルする場合は、貸出業者が免許を取得しているため、利用者は申請不要で利用できます。(簡易業務用無線機の登録局に限る)

原則として、警察無線や消防無線、航空無線や船舶無線、一般業務用無線を利用する人は、無線従事者免許を取得している必要があります。しかし、業務用無線の中でも出力が5W以下の簡易業務用無線を使用する場合は、個人資格は必要ありません。

また、タクシー無線の場合、タクシーの基地局側に免許保有者がいれば、個々のタクシー運転手に免許資格は必要ありません。本来、タクシー無線は一般業務用無線に該当し、利用にあたって第三級陸上特殊無線技士以上の免許を保有していなくてはなりません。しかし総務省の定めにより、免許保有者が主任無線従事者として届けられており、その監督のもとでの使用であれば、免許資格のないものでも無線の使用が可能です。

アマチュア無線とは?使用される場面

アマチュア無線とは、個人が自身の趣味で使用する無線のことです。電波法では、その目的を「金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的な無線技術の興味によって行う」ものとされており、一般財団法人日本アマチュア無線振興協会でもその定義を同様にしています。

このように、アマチュア無線を業務で使用することは電波法で禁止されています。これに違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課される場合があります。あくまで利用の範囲は個人の趣味や訓練、研究の範囲にとどめる必要があるため、使用の内容には注意が必要です。

個人での利用であるとはいえ、アマチュア無線を利用するためには資格が必要です。アマチュア無線では「アマチュア無線技士」の資格が必要とされており、1級〜4級が設けられています。級によって操作できる周波数や設備の範囲が異なるので、目的にあった資格を取得する必要があります。また、無線局を開設するためには無線局免許状の申請が必要です。

前述のように、アマチュア無線が利用できるのは業務以外の用途に限られますが、利用の状況によっては区分けの判断が難しい場合もあります。たとえば、会社や団体で行うレクリエーションで無線が必要な場合がありますが、この場合は直接の業務の場面ではなくても、業務の一環と判断され、アマチュア無線は利用できません。

アマチュア無線を業務目的で利用した場合、電波法違反とみなされる可能性があるため、利用にあたっては十分注意しましょう。

業務用無線の使用に免許や資格は必要か

業務用無線を使用する場合、業務用無線の種類によっては免許や資格が必要となります。免許が必要な業務用無線を無免許で使用すると電波法に違反することになります。ここでは、無線の種類に応じた免許や資格について解説します。

一般業務用無線

一般業務用無線の場合、無線従事者免許が必要となる場合があります。

たとえばタクシー無線のように、主任無線従事者が届けられており、その監督のもとで操作を行う場合は、操作者であるタクシー運転手の無線従事者免許は不要です。しかしこ、無線従事者資格を持った主任無線従事者の設置が前提となります。全員の資格が不要というわけではない点には注意が必要です。

また無線局の免許申請も必要です。免許申請は管轄の総合通信局に行います。申請は必要な書類を作成できれば、本人が行うことも可能です。しかし免許申請は初心者にとっては手続きがやや複雑です。専門の無線機販売会社などに依頼し、書類の作成を行なってもらうのも方法の一つです。委任状まで作成すれば、申請自体のサポートも含めて依頼が可能です。

申請にあたっては、印紙代などを含めた開設費用が必要です。申請前にあわせて確認しておきましょう。

特定小電力無線

いわゆるトランシーバーのことです。特定小電力無線の場合、免許や資格は不要で、購入した機器の封を開けたら、そのまますぐに使用できます。また無線局の開設費用なども必要ありません。(一部申請が必要な機器もあります)

簡易業務用無線

簡易業務用無線の場合は、無線従事者の資格は必要ありません。ただし無線局の免許の申請は必要です。

無線局の免許を受けるためには、管轄の地域の総合通信局へ交付申請書等の必要書類一式の提出が必要です。一般業務用無線の手続きと同様、申請は本人が行うこともできますが、無線機販売会社や行政書士といった専門にサポート依頼する方法もあります。初心者の場合は申請のすべてを自分で進めるのは難しいため、無線機販売会社のサポートを積極的に検討しましょう。

申請時には、無線機の台数分の印紙代が必要です。印紙代は無線局の種別などで定められているので、事前に確認しておきましょう。またデジタル簡易無線の場合、利用形態によって「登録局」を選択できます。この場合、免許の申請は必要ありません。

MCA無線

MCA無線とは、マルチチャンネルアクセス方式による業務用通信無線のことです。緊急・災害時に使われる無線で、第三者無線とも呼ばれます。

MCA無線の場合、資格は不要ですが、免許申請が必要となります。また開設費用もかかります。

またMCA無線を使用する場合は、免許申請とあわせて、一般財団法人移動無線センター宛に利用の申し込みを行います。一般財団法人移動無線センターは、MCA通信システムを管理・運営している団体です。

MCA無線でも他の無線と同様に、無線機販売会社を使ったサポート申請が可能です。委任状等の必要書類を業者に預けることで、手続きをサポートしてくれます。

無線設備を扱うために必要な資格の取得方法

無線設備を扱うためには資格が必要です。無線従事者資格を取得するためには、4種類の方法があります。

国家試験の合格

資格ごとの国家試験に合格することで、無線従事者の資格を得られます。無線従事者資格の国家試験は、公益財団法人日本無線協会が実施しています。

試験では無線機器の操作方法や必要とされる知識について、無線資格ごとに問われます。無線従事者の国家資格は23あり、合格することでそれぞれの従事者資格を取得できます。

養成課程の修了

養成課程とは、総務大臣に認定された機関が実施する講習です。無線操作を行うための知識や技術の習得を目的としており、受講者は講習を修了することで、国家試験合格者と同等の知識と技能があることが認められます。つまり養成課程を修了すると、国家試験を受験せずに従事者資格を取得できます。

なお養成課程には、短期養成課程と長期型養成課程があります。どちらに該当するかは資格の内容によって異なります。

短期養成課程では、第4級海上無線通信士、航空無線通信士、各級特殊無線技士、第3級、第4級アマチュア無線技士などの資格を取得できます。養成課程は公益財団法人日本無線協会や一般財団法人日本アマチュア無線振興協会などが総務省の認定のもとで実施しています。定められた講習を受講後、修了試験に合格することで、申請によって免許を取得できます。

認定講習課程の修了

一定の無線従事者の資格と業務経歴がある場合、認定講習課程を修了することで、国家試験を受けずに上位の資格を取得できます。資格によっては講習が必要なケースもあります。

学校で無線通信に関する科目を履修して卒業

無線通信に関する科目を修めて、大学、短期大学、高等専門学校または高等学校を卒業することで、無線従事者の資格を取得できます。

国家試験の一部免除認定校、科目確認認定校、長期型養成課程認定校、新規訓練認定校の4種類があり、学校や部科によって取得できる資格や免除される科目が異なるので、目的の無線資格がある場合は事前に確認しましょう。

まとめ

アマチュア無線と業務用無線はどちらも無線ではありますが、それぞれ使用目的が異なっており、電波法によって使い方に制限が課されています。

アマチュア無線を使った業務用の通信はできず、業務用の無線を利用するにあたっては、原則的に資格や申請が必要です。法律に則り、必要とされる手続きを確実に進めましょう。

個人が取得する無線従事者資格には有効期限がありませんが、企業などの利用団体に交付された免許の有効期限は5年です。免許取得後も、しっかりとした管理と手続きが必要といえます。

無線資格の取得や申請手続きは、特に初めて使用される方にとっては難しいと思われるかもしれません。
弊社では申請等の各種手続きをサポートも行っており、委任状にもとづいた手続きや免許更新の管理もあわせてサポートしておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。