この記事では特定小電力トランシーバーの優れている点や、類似する別の無線機との相違点などを詳しく解説しています。

購入や導入を検討中の方に向けて、具体的な用途はもちろん、実際に通信ができる距離から免許について、コストを含めた導入の手間まで掘り下げています。

また、法改正にともない使用が不可となることの詳細や、必要となる手続きも細かく説明しているので、法令を遵守し罰則を受けないためにも、ぜひ最後までお読みになってください。

特定小電力トランシーバーとは

特定小電力トランシーバーとは、1対1はもちろん、一斉に複数人との通話が可能であり、さまざまな業務で利用される無線機のひとつです。略して「特小」と称されています。

特定小電力トランシーバーは、安価で小さなことから多数の企業に採用されており、業種や業界問わず多方面で活躍している無線の機器です。

たとえば医療・福祉、交通整備、冠婚葬祭、飲食店、スポーツ施設・アウトドアなどにて重宝されています。

とくに精密な医療機器を扱う医療や福祉の現場では、別の医療機器に作用しない電波を使う特定小電力トランシーバーが貴重な存在となっています。

また、携帯電話が圏外になるような山岳地帯であっても通信にはとくに問題がありません。そのため、山間の工事現場などのような、携帯キャリアの電波が届かない不便な土地でも活躍します。

特定小電力トランシーバーと他の無線機との違い

それでは、より掘り下げて特定小電力トランシーバーの特性を説明するために、同類の機器との違いを解説します。

業務用無線機との違い

まず通信ができる距離については、短距離タイプの特定小電力トランシーバーとは違って、業務用無線機は長距離の伝達に特化したタイプです。

業務用無線機は送信する出力が特定小電力トランシーバーに比べて大きい分、通信が可能となる距離が約5kmと長くなっています。

遮蔽物がなく見通しが良好な場合、約20km近くまで伝達距離を延ばすことも可能です。

しかし、軽く小さいため持ち運ぶことに向いている特定小電力トランシーバーに対し、送信出力が高いため電池消耗が大きい業務用無線機は、本体が大きく重量もあるため持ち運びに負担になる可能性がございます。

その上、送信出力が高い分だけ業務用無線機は無線機自体の価格が高額です。特定小電力トランシーバーは、本体自体が非常に小さく、かつ出力が抑えられているため低い価格帯となっています。

また、1W出力以上を使用する場合、総務省総合通信局の免許が欠かせません。そのため、業務用無線機の使用には免許申請と登録が必要になるため、手軽に導入ができないという欠点があります。

対する特定小電力トランシーバーは送信する出力が低い分、免許や登録などの申請が必要ないため、すぐにでも取り入れることが容易にできます。

加えて「中継機」を使うことで通信距離の延長ができるため、非常に長距離ではない限り、特定小電力トランシーバーでカバーが可能です。

ただ、すべてが中継機を使えるわけではないので、利用する無線機が中継機に対応したものか、事前に確認するようにしてください。

IP無線機との違い

特定小電力トランシーバーと同様に免許や登録が不要なIP無線機は、大手の通信事業者であるソフトバンク、ドコモ、auなど各キャリアのデータ通信網を利用する広域タイプです。

そのため、携帯電話の圏内であれば、北海道と沖縄のように離れていても日本国内どこでも通信が可能になっています。

しかし、建物の地下や山岳地帯など携帯電話がつながらない圏外のエリアになれば、IP無線機も通信不可になってしまうので注意が必要です。

また、購入費やレンタル費とは別に、携帯電話と同様にIP無線機には毎月の通信料が発生します。一方で、特定小電力トランシーバーは小型で安価な上に、通信料が発生しないため、価格面で比較すると導入が手軽といえます。

特定小電力トランシーバーのメリット

ここからは特定小電力トランシーバーの5つのメリットについて解説いたします。

免許や登録の必要がない

送信出力が0.01Wと非常に小さく、通信距離も短い一方で、送信出力が小さいがゆえに周囲にある別の電波への悪影響も少ないのが特定小電力トランシーバーの特徴です。

出力や影響度が小さいため、総務省が定める免許や登録が不要となっています。利用に際しては面倒な申請作業が不要となるので、すぐに業務へと取り入れられます。

コンパクトで持ち運びやすい

コンパクトな特定小電力トランシーバーは小型な上に軽量のため、持ち運びの観点で非常に適した無線機です。

持ち運びが容易なため使用できる場面がとても多く、病院や工事現場、飲食店、ホテル、スポーツ施設、アウトドアなどで使用しやすいでしょう。

多くの人に無線機を使わせたい場合であっても、現場まで大量の無線機を運ぶ労力が少なく済むというメリットにも繋がっています。また、ハンズフリーのタイプもあるため、手が作業で塞がってしまう業務でも安心して利用が可能です。

タイムラグが短い

従来の無線機はタイムラグが発生して会話がスムーズにいかないことがあり、伝えたいことが上手く伝わらず作業効率に悪影響がありました。

しかし、特定小電力トランシーバーの場合、電波の送受信が速いためタイムラグが改善されました。特定小電力トランシーバーによって効率よく通信のやり取りが可能になり、作業の能率を大きく向上できるでしょう。

毎月の通信料が発生しない

本体にはレンタル費用または購入費が掛かるものの、前述したIP無線機のように毎月の通信量は発生しません。

端末の価格も比較的安いうえに、毎月のランニングコストが発生しないということで個人経営の飲食店や医院でも導入しやすい無線機といえます。

バッテリーの消耗が少ない

特定小電力トランシーバーは送信出力が小さく抑えられていることから、単3乾電池1本で24時間以上も使用が可能なものが多く、バッテリー消費が非常に少ないといえます。

なかには単3乾電池3本タイプで、約80時間以上の使用ができるものも存在しており、長時間に渡り使い続けなければたいていの業務においてバッテリー消費で困ることはありません。

また、繰り返し充電が可能な充電式バッテリーも24時間以上の使用が可能なものが多いので、業務上で使う頻度が多くなる場合であっても、バッテリー消費による作業の支障を防げます。

一部の特定小電力トランシーバーやアナログ無線は使えなくなる

本来は2022年の11月時点で、電波法の改正にともない一部の特定小電力トランシーバー、アナログ波を使う機種の使用ができなくなる予定でした。

しかし、新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響等による無線設備の製造や移行作業に遅れが生じていることを考慮し、2021年(令和3年)8月に無線設備規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令119号)の附則第3条及び第5条の一部を改正し、その使用期限を当分の間、延長することになりました。
総務省は今後、新型コロナウイルス感染症の収束や社会経済状況等の回復を踏まえつつ、移行期限を総合的に検討するとともに、それまでの間については、早期に新スプリアス規格へ移行が図られるよう各免許人の状況に応じて対応していくこととしております。

使えなくなる理由

無線機で使用する電波は、有限な資源とされています。

そのため、電波の利用はデータ伝送などの需要の高まりに合わせて、従来のアナログ方式よりも効率的に電波を活用できるデジタル方式へと統一されることになりました。

こちらは簡易業務用無線機においての話であり、特定小電力トランシーバーは上記の対象外となっております。よって「特定小電力トランシーバーのデジタル化(アナログ廃止)」はありません。

しかし、特定小電力トランシーバーでも旧スプリアス規格(不明なものも含む)の無線設備については、その使用期限を2022年(令和4年)11月30日までとしていました。旧スプリアス規格の特定小電力トランシーバーは使えなくなる予定でしたが、前述のとおり、現在その使用期限を当分の間、延長することになっております。

使えなくなる周波数

使用が廃止となるのは、簡易業務用無線機のアナログ350MHz帯と400MHz帯の周波数です。具体的な数字としては、下表の周波数となります。

ヘルツ帯具体的な周波数
350MHz348.5625MHz~348.8MHz
400MHz465.0375MHz~465.15MHz
468.55MHz~468.85MHz

デジタル方式とアナログ方式の両方を兼用で使用できる「デジアナ機」の場合は、上表の周波数に該当する場合のアナログ方式の部分のみが使えなくなります。

また、上記の周波数とは別に、同じ簡易業務用無線機のアナログ無線機であっても150MHz帯の無線に関しては今のところ廃止の予定はないため、2024年11月30日を過ぎたとしても今までと同様に使用可能です。

使えなくなる予定の特定小電力トランシーバー

将来的に使えなくなるタイプは旧規格(旧スプリアス)のもので、新規格であれば問題なく継続した使用が可能なので心配ありません。

お使いになる機種が旧規格かどうかは、本体に記載されている技術基準適合証明番号で判断できます。総務省の電波利用ホームページにある「技術基準適合証明等を受けた機器の検索」で、スプリアス規定の「旧規定」か「新規定」をお調べいただけます。

ですが、一部の特定小電力トランシーバーには、旧規格と新規格が混在しているため、判別が困難な場合がございます。その場合は弊社までお気軽にお問い合わせください。

使用した場合の罰則

簡易業務用無線機のアナログ無線機の利用が完全にできなくなる2024年の11月30日以降に、前述した使えなくなる周波数や無線機を使用すると、電波法違反の罪にあたり罰せられてしまうので注意してください。

罰則としては1年以下の懲役または100万円以下の罰金となっています。廃止後に使えなくなる機種を持っているだけでは問題ないため、仮に廃止になる期限までに処分が間に合わなくても処罰を受けることはありません。

アナログ無線を所持している場合に必要な手続き

法律の改正によって生じるアナログ無線機の利用停止にともなって、停止や更新といった手続きが必要となります。

無線局の停止手続き

停止するためには、総務省が定めた正規の手続きが必要です。手続きは総務省のホームページにある「無線局停止届」の書類をダウンロードして、必要となる項目を記入し送付すれば終了となります。

デジタルの更新手続き

アナログとデジタルがともに利用できるタイプであれば、アナログ無線機が廃止となる2024年11月30日以降であっても引き続き使用が可能です。

しかし、アナログ波の部分の停波処理作業が必要となるため、そちらの処理は忘れないようにしましょう。1台ずつアナログ波の発射を止めるための専用のソフトを使います。

メーカーによって差があるものの、専門の作業による労力と手間が掛かることから、無線機1台あたり5,000円~10,000円ほどの費用が掛かると見込まれます。

まとめ

あらゆる分野で使われる特定小電力トランシーバーを業務用無線機、IP無線機と比較しつつメリットを解説いたしました。
導入がとても簡単にできるうえに業務効率の改善も図れるため、ぜひ特定小電力トランシーバーの検討をなさってみてください。

お困りのことがございましたら、弊社までお気軽にご相談くださいませ。