2024年11月30日をもって、400MHz帯と350MHz帯のアナログ無線機の使用が禁止されます。

それにともない、従来のアナログ無線機をデジタル無線機へと入れ替えるなどの対応が必要です。

そこで本記事では、2024年12月1日以降のデジタル化における注意すべきポイントについて、詳しく解説します。

また、これまでアナログ無線機をメインで利用してきた方向けに、デジタル無線機の特徴や性能、アナログ無線機との違いについても詳しく解説します。

デジタル無線機とは

デジタル無線機は、電波を「デジタル方式」で発信する無線機のことです。

デジタル方式とは、音声を「0」と「1」のデータに置き換えて発信する、電波の送信方式で、アナログ無線と比べて音質も良く、より長距離の通信が可能です。

2000年台後半から導入が進み、現在では無線による通信方式の主流になっています。

アナログ無線機との違い

アナログ無線機とデジタル無線機の大きな違いは、電波の送信方式です。

前述のように、デジタル無線機は音声をデジタル化することで電波を発信しますが、アナログ無線機では「アナログ方式」と呼ばれる音声の振幅を電波にそのまま乗せる送信方式を使います。

アナログ方式は、入り組んだ地形に強いというメリットがありますが、占有する周波数帯幅が大きく、音質が悪いという欠点があります。

一方、デジタル無線では、音声を「0」と「1」にデジタル化したうえ電波で送信するため、占有する周波数帯幅が小さいのが特徴です。

またデジタル化することにより、アナログ方式と比べて音質がクリアというメリットもあります。

このようにデジタル方式はアナログ方式と比較して音声を効率的に送信できる送信方式です。
逼迫する周波数帯の状況のなかで、デジタル方式は電波を有効利用できる通信方式であり、状況の改善のために強く求められている通信方式といえます。

デジタル無線機が生まれた背景

デジタル無線機は、通信で占有する周波数帯幅が小さくてすむのが特徴です。

使用できる電波の周波数は限られているため、可能な限り有効に利用しなければなりませんが、すでに多くの通信に割り振られており、新たな利用のために帯域を確保することが難しい状況にありました。

デジタル無線はこのような社会背景のなかで導入されたものです。周波数の有効利用のためには、周波数帯幅の一部をコンパクトに再編することが不可欠でしたが、デジタル無線機は使用する周波数帯幅が小さく、状況改善にはうってつけでした。

2008年には、総務省による簡易無線のデジタル化の推進が始まり、デジタル無線機の導入・移行がスタートし、その後時間をかけて普及が進んできたという背景があります。

デジタル無線機のメリット

デジタル無線機のメリットとして挙げられるのが、雑音のないクリアな音声を送信できることです。

音声をデジタル化するため、アナログ無線機と比較するとノイズの混入がほとんどなく、クリアな音声を送信できるのが特徴です。

また電波の特性上、直進性に優れており、長距離の通信にも適しています。

さらに、通信に「秘話コード」を設定できるのも、デジタル方式の大きなメリットです。

秘話コードは通信の秘匿性を高めるために設定されるコードのことで、秘話コードを知らない限りは、第三者が同じチャンネルを使用していても、通信の内容を聞かれることがありません。

秘話コードは32,767通りと非常に多く、高いレベルで通信内容を保護できます。また、デジタル無線は混信が少ないため、ほかの電波に影響されて通信が乱れることもありません。

アナログ無線機は今後使用できなくなる

アナログ無線機は、令和6年(2024年)12月1日以降は使用できなくなります。

電波の有効利用を促進するため、アナログ無線からデジタル無線への切り替えが促進されており、その移行期限が2024年11月30日と定められています。

この期限以降に対象のアナログ無線機から電波を発した場合、電波法違反として罰則(1年以下の懲役刑または100万円以下の罰金)の適用を受けることになります。

現在対象のアナログ無線機を使用している場合は、使用期限までにデジタル無線機への移行を進めるか、無線の廃止手続きを進めなければなりません。

使用できなくなる周波数帯

使用できなくなる周波数帯は「350MHzおよび400MHz帯のアナログ方式の周波数」です。
これにより移行期限をもって、下記のアナログ無線機は使用できなくなります。

• 400MHz帯のアナログ方式の簡易無線(アナログUHF簡易無線)
• 350MHz帯のアナログ方式の簡易無線(小エリア簡易無線・新簡易無線)

またアナログ方式とデジタル方式の両方を使えるデュアル方式の無線機を使用している場合も、アナログ方式部分について、対応が必要です。

無線の廃止手続きに加えて、無線機本体のアナログ方式の機能部分について、改修および設定変更を行う必要があります。

またスプリアス規格の無線機も、不要な電波を低減させることを目的に、2024年11月30日を期限として対応が義務付けられています。スプリアス規格は2005年に新たな基準が設けられており、その基準にもとづき、下記の無線設備の使用期限が11月30日までとされています。

• 2007年11月30日以前に製造された無線機(不明なものも含む)
• 旧スプリアス規格の無線機で、新スプリアス規格に適合していない無線機

ただし、無線機器が新スプリアス規格に適合していることが確認できた場合、 届出書を提出することで、2022年12月1日以降も継続して使用できます。

スプリアス規格の無線機を所持している場合は、あわせて対応しておきましょう。

デジタル化における注意事項

デジタル化に対応するにあたっては、いくつかの注意すべき事項があります。
ここでは必要な申請手続きや、チェックしておくべき事柄について解説します。

総合通信局に申請する内容

アナログ無線機からデジタル無線機に移行する場合は、管轄の総合通信局に申請が必要です。
デジタル無線機を使って継続して無線を使用する場合は、変更の申請を行います。

アナログ無線機の使用終了とあわせて無線の使用を終える場合は、廃止の申請を行います。廃止の申請をした場合は、その時点でアナログ無線機は使えなくなるため注意してください。

また廃止した場合は2024年12月1日以降に免許状を返納する必要があります。アナログ方式とデジタル方式の両方が使えるデジタル無線機を使用している場合も、手続きが必要です。アナログ方式部分について、対象の周波数が発射できないよう改修を施した後に、無線局の変更の届出を提出します。

機器の買い替えにともなっては、免許局と登録局の変更が必要になる場合があります。法人などが自社の業務に用いる場合は免許局に、またレンタルなどで第三者へ使用を提供する場合は登録局へ登録を行っていますが、それぞれの局では登録できる周波数帯が異なります。

機器の買い替えで周波数帯に変更が生じる場合は、変更申請を行う必要があります。

これらの手続きはすべて期日である2024年11月30日までに済ませる必要がありますが、直前は混雑が予想されます。期間的な余裕があるうちに、相談なども含めてすませておくことをおすすめします。

「技術基準適合証明等のマーク」付きの無線機を選ぶ

「技術基準適合証明等のマーク」は「技適マーク」とも呼ばれ、日本国内で使用するために作られた無線機に付けられています。

技適マークは、電波法で定められた技術基準に適合している無線機であることを証明するものです。インターネットなどを使って海外から無線機を購入した場合、技適マークが付いていない場合があります。

技適を通ってない無線機では免許を受けられず、使用すること自体が電波法違法になる場合があります。無線機の購入は国内の信頼できるショップを通して購入することをおすすめします。

申請費用

申請手続きの際は、総合通信局に手数料を支払います。

申請の種類 手数料 備考
免許申請 1台あたり4,250円 電子申請の場合、3,050円
変更申請 不要
廃止申請 不要
登録申請(包括登録) 1団体あたり2,900円 電子申請の場合、2,150円
登録申請(個別登録) 1団体あたり2,300円 電子申請の場合、1,700円

なお「包括申請」とは、無線機を2台以上一括で登録する場合です。

1台ずつ個別に登録する場合は「個別申請」となり、手数料が異なります。上記のとおり、アナログ無線機の廃止については、手数料はかかりません。

ただし新たに免許局に免許を申請する場合は、1台あたり4,250円の手数料を収める必要があります。

またこれにあわせてデジタル無線機の機器購入費がかかることも押さえておきたいポイントです。

デジタル化のスケジュール例

無線のデジタル化を迎えるにあたっては、事前の準備が必要です。

特に免許や登録は申請後、約1か月程度の処理期間を要します。

申請期限の2024年11月30日に近づくほど、申請が殺到することが見込まれ、その分手続きにかかる期間も長くなることが予想されます。

また無線機もニーズの高いものから在庫がなくなっていくことも予想されるため、スケジュールを立てながら早めに準備を進めていくことが重要です。

たとえばスケジュールとしては、下記のような例が考えられます。

①デジタル無線機へ移行する場合
2024年4〜6月:デジタル無線機の機種選定
2024年6~7月:デジタル無線機を購入・レンタル契約
2024年7~8月:総合通信局へ免許申請・変更の届出を行う
2024年12月以降:アナログ無線機の廃棄

②デュアル方式の無線機を改修する場合
2024年4〜6月:デュアル方式無線機の改修業者の選定
2024年6~7月:デュアル方式無線機の改修
2024年7~8月:総合通信局へ変更届出を行う

まとめ

対象の周波数を使うアナログ無線機を所持している場合、無線機のデジタル化は必ず対応しなければなりません。

またデジタル無線機への入れ替えには費用や手間などのコストもかかるうえ、手続きも煩雑です。
特に期限が近づくにつれて無線機のニーズが急激に増加することが見込まれることから、機器の調達に思わぬ手間をとられてしまう可能性があります。

在庫の関係からベストな機器を選べない可能性もあるため、今のうちから余裕をもって準備を進めておくことをおすすめします。

特にアナログ無線機からの切り替えの場合、無線機の選び方に迷うこともあるはずです。

ジャパンエニックスでは多数のデジタル無線機を取り揃えており、
機器の選定や入れ替え計画のご案内も行っております。

この機会にぜひ弊社の利用をご検討いただけますと幸いです。

お問合せはこちら