2024年(令和6年)11月30日をもって、アナログ無線機の周波数帯が一部使えなくなります。アナログ簡易無線機が使用している400MHz帯、350MHz帯の電波の使用が禁止されるため、これ以降に同周波数帯で電波を発してしまうと、電波法への違反として刑罰の対象となる可能性があります。

なお、アナログ無線の周波数帯の一部廃止は、当初は2022年(令和4年)11月30日が予定されていました。
しかしコロナ禍の影響を受けて、期限が2024年11月30日に延期されることになりました。

本記事ではアナログ無線機の使用が終了することになった経緯なども含めて、行うべき手続きと今後取るべき対処法について詳しく解説します。

アナログ無線機のデジタル化への移行期限

アナログ無線機のデジタル化への移行期限は、2024年11月30日です。

アナログ無線機の利用の終了は、2008年(平成20年)8月に総務省が行った「周波数割当計画」の変更にもとづいています。

これにともないアナログ無線機からデジタル無線機への移行が進められ、デジタル化への移行には期限が定められました。本記事執筆時点では、アナログ無線機へのデジタル化への移行期限は、2024年11月30日とされています。

これによって、翌日の2024年12月1日以降は、対象となるアナログ無線機の使用は電波法によりすべて禁止されます。

なおデジタル化への移行については、当初は2022年11月30日までを期限として進められていました。しかし、2020年初頭から拡大したコロナ禍と、それによって生じた社会経済への影響を考慮し、移行期限を2024年11月30日までとして延長されることになりました。

なお今回は、激変緩和措置として2年間の移行期限の延長が決定されましたが、今後の社会情勢の変化によっては、再度の変更が生じる可能性もあります。最新の情報を継続してチェックすることをおすすめします。

使用ができなくなる周波数帯

使用できなくなる周波数帯は、400MHzと350MHzの2種類の周波数帯です。

これらの周波数帯は、アナログ簡易業務用無線機(400MHz)、小エリア簡易業務用無線機(350MHz)で使用されており、デジタル化へ移行した後は、これらの簡易業務用無線機を使った通信はできなくなります。

なお、移行完了後の2024年12月1日以降にこれらの周波数帯を利用すると、電波法違反となります。

アナログ無線機とは

アナログ無線機とは、通信を「アナログ方式」で行う無線機のことです。

分かりやすく説明すると、「アナログ方式」では、電波に音声の波をそのまま乗せて送るイメージです。

アナログ無線は障害物に強く、入り組んだ地形でも電波が届きやすいという利点がある反面、電波の直進距離がそれほど長くありません。またバッテリーの持続時間が長く、充電の環境が整っていない場所での使用にも適しています。

これらの特性から、アナログ無線機は災害時の通信手段などに採用されてきた歴史があります。
また音声の取り扱いをアナログ方式で行うため音質が悪く、通信を第三者に傍受される可能性があります。

そのため、秘匿性を求められる通信には適していません。

アナログ無線機とデジタル無線機の違い

アナログ無線機とデジタル無線機の違いは、電波の飛ばし方に違いがあります。

それぞれ「アナログ方式」「デジタル方式」という発信方式を用いており、音声を電波に乗せる「変調」の方法が異なっています。

アナログ方式では音声の音響的な振幅をアナログ信号として電波に乗せて送信します。
例えるなら、音声の波のかたちをそのまま電波にして送っているようなイメージです。

一方のデジタル方式では、音声をデジタル信号として扱います。音声を一度数値としたうえで、電波に乗せて送信します。

音声が0と1のデジタルデータに変換されるため、アナログ方式と比べてデータが圧縮されるのが特徴です。

デジタル方式はアナログ方式と比べて通信容量が少なくすみ、一度の送信でよりたくさんの音声情報を送れるのがメリットです。

なお、デジタル方式は音声をデジタル化するため、アナログ方式よりもクリアな音声を送ることができ、また電波の直進性が高いことから、より遠くまで電波を飛ばすことができます。

さらに5桁の数字(32,767通り)で設定される「秘話コード」を使用でき、この数字を設定した無線機以外による通信の傍受を遮断できます。

これらはデジタル方式に特有な機能・性質で、アナログ無線では実現できないものです。ただしデジタル無線機はアナログ無線機と比較して、バッテリーの消費容量が大きいこと、また電波が障害物に弱いことなどのデメリットもあります。

アナログ無線機廃止の目的

デジタル無線機は電波をデジタル方式で取り扱うため、アナログ無線機と比べていくつものメリットがあります。

最大のメリットのひとつが、通信で使用する周波数帯幅が小さいということです。占有する帯域がアナログ無線よりも小さいため、電波の周波数帯幅を有効に使用できます。

電波は限られた資源であり、無限に使えるものではありません。

限られた周波数帯域のなかで、テレビやラジオ、携帯電話、Wi-Fi、Bluetooth、警察、救急無線、消防、海上、航空、鉄道無線といったさまざまな用途への割り当てが行われています。

現在、国内の電波の周波数帯はさまざまな用途のもと、ほぼ全域が使われています。新たな用途のために空いている周波数帯を利用しようとしても、用途と周波数帯の特性があわないなどの状況も生まれており、解決すべき課題となっています。

社会における情報密度の向上や取り扱うデータの肥大化、またそれらを使用するための、無線によるデータ伝送のニーズは、今後よりいっそう高まることが想定されます。

限られた電波の有効利用の促進のため、電波を効率的かつ高品質に取りか使えるデジタル無線機への移行が求められた結果、2008年8月に行われた総務省の「周波数割当計画」の変更にもとづき、アナログ無線機からデジタル無線機への移行が進められてきました。

2024年11月30日までに必要な手続き

アナログ無線機の廃止にともない、下記に該当する無線機は、期限である2024年11月30日までに廃止の手続きが必要です。

• 400MHz帯を使用するアナログ方式の簡易無線(アナログUHF簡易無線)
• 350MHz帯を使用するアナログ方式の簡易無線(小エリア簡易無線・新簡易無線)

総務省の公式サイトからダウンロードできる届出書に必要事項を記入し、提出します。
なお、2024年11月30日以前に廃止届を提出した場合、その時点でアナログ無線機は使えなくなります。

またアナログ無線機の使用停止とあわせて無線機自体の使用を止める場合は、2024年12月1日以降に免許状を返納します。返納期限は2024年12月中です。

また、アナログ方式とデジタル方式の両方を使える「デュアル方式」の無線機を使用している場合も手続きが必要です。

デジタル無線機として無線の使用を継続する場合は、下記の2つの手続きが必要になります。

• アナログ無線機能を使用できないように機器を設定変更・改修する
• 無線局の変更届を提出する

機器の改修は業者に依頼して行ってもらいます。
また、廃止届、変更届などの書類は、管轄する総合通信局に提出します。(提出先は届出書の文面および総務省公式ホームページの案内でご確認ください)

なお、アナログ一般業務用無線(SR)、VHFの150MHz帯の簡易業務用無線機はこの規制の対象には当てはまりません。

デジタル無線機に入れ替える主な方法

継続して無線機を使用する場合は、デジタル無線機への入れ替えが必要になります。
なお、2024年12月1日以降も、対象となるアナログ無線機を所持するだけであれば罪には問われません。

ただし電波を発した時点で電波法違反となるため、早めに準備を済ませておいた方がよいでしょう。アナログ無線機からデジタル無線機への入れ替えでは、次の5つの方法が考えられます。

• すでにあるアナログ無線機を段階的にデジタル無線機へ入れ替えていく
• 必要最低限のデジタル無線機を買い替え、不足はレンタルで対応
• すべてのアナログ無線機をデジタル無線機へと買い換える
• 無線機をすべてレンタルへと切り替える
• 定額制・イニシャルコストゼロのサブスクプラン「イージープラン」へと切り替える

すでにあるアナログ無線機を段階的にデジタル無線機へ入れ替えていく

まずひとつ目が、すでにあるアナログ無線機を段階的にデジタル無線機へと入れ替えていく方法です。

購入費用が分散されるので、予算上も都合がつけやすいというメリットがあります。

納入までに日数を要する場合がありますが、2年間の期日の延長が決定したため、計画的な入れ替えが進められます。

必要最低限のデジタル無線機を買い替え、不足はレンタルで対応

2つ目が、必要最低限の台数だけデジタル無線機に入れ替えて、不足が生じたらレンタルで対応するという方法です。

こちらも一度にかかる予算を抑えられるのがメリットです。また、必要台数の見直しを行う機会にもなるでしょう。

欠点としては、レンタルで対応する分の台数を見誤っていた場合、レンタルでの台数確保と手続きが煩雑になることです。台数の精査はよく行う必要があります。

すべてのアナログ無線機をデジタル無線機へと買い換える

3つ目が、すべてのアナログ無線機をデジタル無線機へと買い換えるという方法です。

費用はかかりますが、一番シンプルで現状を維持できる方法です。手続きもまとめてできるのも利点です。

無線機をすべてレンタルへと切り替える

4つ目が、無線機をすべてレンタルへと切り替えるという方法です。

最も手間がかからずにデジタル移行への対応ができます。

行うこともアナログ無線機の処理だけですむため、短期間での対応が可能です。またレンタルは購入と比べて費用が安くすむため、導入コストを大幅に圧縮できます。

ただし、長期間のレンタルになると、購入した方が安くすむケースも出てきます。機器のレンタル料と台数、レンタルする期間よっても変わってきますが、レンタル対応する場合はランングコストをよく確認しておきましょう。

定額制・イニシャルコストゼロのサブスクプラン「イージープラン」へと切り替える

最後が、定額制・イニシャルコストゼロのサブスクプラン「イージープラン」へと切り替える方法です。

申請手続きと本体機器代込みの定額制となり、オプションで保守メンテナンスも付加できます。契約年数は2年、3年、5年を用意しており、契約満了後は新たな機器へと契約変更ができるので、経年劣化の心配や買替時期の検討、予算取りの必要がなく、毎月の経費で処理できるのが魅力です。

IP無線機など、毎月の通信利用料がかかる無線機に人気のプランで、通信利用料と本体機器代込みのジャパンエニックスオリジナルプラン「イージープラン」がおすすめです。

デュアル式は改修が必要

また、アナログ方式とデジタル方式の両方を使える「デュアル方式」の無線機を使用している場合は、アナログ無線の部分について、機能が使えないように工事をしてもらう必要があります。
この場合にかかる費用は、数千円を見ておけばよいでしょう。

まとめ

対象のアナログ無線機は、使用期限である2024年11月30日までに対応を済ませておきましょう。

2024年12月1日以降に対象となるアナログ無線機から電波を発してしまうと、電波法に違反したことになり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられてしまいます。

期限はまだ先ですが、直前は需要も高まり在庫も枯渇しがちです。
また、今日の半導体不足による電子機器製造への影響、世界的な物流遅延など、商品の供給が不足すると懸念されております。
事前にしっかりとした計画を立て、少しずつ準備をすすめていくのがおすすめです。

特にコロナ禍によって期限が2年間延長された今は、計画の見直しを行うよい機会です。
業務コストの見直しを行っている企業も多いはずなので、費用負担の軽減なども含めて、計画を再検討するとよいでしょう。

特に部分的な買い替えやレンタルは、コスト圧縮のための有効な選択肢です。

本サイトでも導入しやすい比較的安価な製品から高機能な機器まで多数取り揃えており、レンタルによる機器の貸し出しも行っています。

ぜひこの機会にご利用を検討いただければと思います。

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