MCA無線のサービス終了が発表され、今後の業務連絡やBCP(事業継続計画)対策に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。MCAアドバンスは2027年3月、800MHz帯デジタルMCAは2029年5月に終了するため、担当者にとって代替手段の選定は急務といえるでしょう。
本記事では、MCA無線サービス終了の時期と理由の解説、代替となるIP無線機や衛星通信トランシーバーなどの特徴を解説しています。
おすすめの代替機種も紹介しておりますので、参考にしてみてください。
MCA無線が終了する時期と理由
本項目ではMCA無線サービスの終了時期や理由を解説します。
・MCAアドバンス:2027年3月31日
・800MHz帯デジタルMCA:2029年5月31日
それぞれの詳細を確認していきましょう。
MCAアドバンス:2027年3月31日
「一般財団法人 移動無線センター」は、MCAアドバンスのサービス終了時期を2027年3月31日と発表しました。
MCAアドバンスは、LTE技術を用いた共同利用型の自営無線システムです。スマートフォン型端末を用いたリアルタイム映像配信やチャット機能などを有しており、低コストながらも安定した通信が可能な強みを活かし、平時・災害時を問わず、自治体の防災連絡などに活用されてきました。
しかし近年、安価で高機能なIP無線やほかの通信システムの普及による競争環境の激化が、サービス終了の主な理由として挙げられています。
中継局は全国に118箇所ありますが、利用頻度の低い一部の局は、2027年3月31日を待たずに休止、もしくは廃止予定です。MCAアドバンスを利用されている企業や自治体は、利用エリアにおける中継局の状況を注視しておきましょう。
800MHz帯デジタルMCA:2029年5月31日
MCAアドバンスとは別に提供されてきた「800MHz帯デジタルMCAサービス」についても、2029年5月31日で終了する旨が発表されています。
こちらは800MHz帯の電波を利用した業務用移動通信システムで、専用通信網により全国規模での通信を実現しています。低コストで広範囲をカバーできる点から、企業のBCP対策や自治体の防災無線として広く活用されてきました。
サービス終了の主な理由は、システムの老朽化です。2003年のサービス開始から20年以上が経過し、対応端末の修理対応やシステムの維持・更新が困難となり、安定したサービス提供の継続が不可能と判断されました。
MCAアドバンスとはサービス内容や終了時期が異なるため、現在利用中のサービスがどちらであるかを確認し、混同しないよう注意が必要です。
MCA無線の代替手段
MCA無線のサービス終了にともない、代替となり得る通信手段の確保が必要です。本項目では、主要な3つの代替手段を解説します。
・手段1:IP無線機
・手段2:トランシーバーアプリ
・手段3:衛星通信トランシーバー
それぞれの通信手段がどのような特性を持っているのか、詳しく見ていきましょう。
手段1:IP無線機
IP無線機は、NTTドコモやauといった携帯電話キャリアのデータ通信網を利用して、音声通信できる無線機です。
携帯電話の通話エリア内であれば、基本的に日本全国どこでも通信が可能な点以外にも、3つのメリットがあります。
・MCA無線の中継局に依存しない広範囲での通信が可能
・キャリアの通信網を利用するため、免許や資格取得が不要
・免許や資格に関する手続きがない分、導入までの時期が短い
上記のほか、一斉同報通信やグループ通話、機種によってはGPSによる位置情報管理や写真・動画の共有といった機能も利用可能です。
一方で、携帯キャリアの通信網を利用するため、通信料が月単位で発生します。また、トンネル内や山間部、地下など電波の届きにくい場所では利用が制限されるほか、大規模災害時などには通信キャリア側の回線が輻輳(混雑)し、つながりにくくなるリスクも考慮しなければいけません。
しかし、近年では法人専用帯域を利用したり、デュアルSIMに対応したりすることで、災害時の信頼性を高めたIP無線機も登場しています。端末の選定時には求める性能を有しているかを必ず確認しておきましょう。
こちらの記事では、IP無線機と通信に使用するIPネットワークの仕組み・構築について解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
手段2:トランシーバーアプリ
トランシーバーアプリは、手持ちのスマートフォンに専用アプリをインストールすることで、音声通信を実現するサービスです。
最大のメリットは、普段使っているスマートフォンに導入できるため、初期導入コストを大幅に抑えられる点にあります。
無料アプリもありますが、ビジネス用途では機能やサポートが充実した有料プランを採用するのが一般的です。
機能としては、グループ通話、テキストメッセージ送受信、音声の自動録音・再生、位置情報共有などが利用できます。導入が非常に手軽で、免許も不要なため、すぐに利用を開始できるのが魅力です。
デメリットとして、スマートフォンのバッテリー消費が激しくなる傾向がある点や、アプリを常に起動しておく必要がある点が挙げられます。
手段3:衛星通信トランシーバー
衛星通信トランシーバーは、上空の通信衛星を経由して通信できる無線機です。
通信エリアの広さと災害時の強靭さが強みであり、地上インフラが被害を受けた大規模災害時や、携帯電波の届かない山間部や海上など、BCP(事業継続計画)対策や極地での活動に適した端末といえます。
機能としては、送信ボタンを押すだけで複数の相手に一斉に音声を届けられるプッシュ・トゥ・トーク通信が可能です。1対1でしか通話できなかったり、呼び出しに時間がかかったりといった制約がないため、ストレスの少ない連絡が可能です。
一方で、IP無線機やトランシーバーアプリと比較すると、端末価格や通信料が高額になるデメリットが挙げられます。また、通信衛星との間に遮蔽物がある屋内などでは通信が不安定になる特性も有しています。別途アンテナユニットを設置するなどの追加コストが発生する可能性も考慮しておきましょう。
MCA無線の代替機種
本項目では、市場で注目されている代替機種を4種類ピックアップし、各端末の特徴や魅力を紹介します。
・IP700PLUS
・ハザードトーク M1
・IP510H
・IC-SAT100
各機種の性能・利用シーンなど、製品情報をもとに解説します。
IP700PLUS
「IP700PLUS」は、アイコム社が提供するハイブリッドIP無線機です。最大の特徴は、携帯電話網を利用する「LTEモード」と、免許・登録が必要な「DCRモード」の機能を1台に搭載している点です。
普段は広域通信が可能なLTEモードを使用し、携帯電波の届かない山間部やトンネル内では、インフラを必要としない自営通信のDCRモードに切り替えて端末同士で通信するといった使い分けも可能です。
LTEモードではNTTドコモとauの回線に対応したデュアルSIMを搭載しており、片方のキャリアで通信障害が発生しても、もう一方のキャリアに切り替えて通信を継続できます。
万が一LTEモードが使えなくなった場合でも、DCRモードのデジタル簡易無線として自営通信ができ、さらに2024年の増波に対応しているため、免許局・登録局ともに多くのチャンネルを利用可能です。
LTE通信とデジタル簡易無線の両方を同時に使用できるデュアルモードや、ほかのIP700PLUSを中継器として利用するリピータモードも搭載するなど、自治体のBCP対策や、広域でのインフラ工事といった、通信への信頼性が求められる現場に最適な1台です。
ハザードトーク M1
「ハザードトーク M1」は、テレネット社が提供する、災害対策に特化したIP無線機です。
本機種の強みは、通信の安定性を確保するための工夫が凝らされている点にあります。輻輳しにくい法人専用データ帯域を利用して通信できるため、災害発生時などアクセスが集中する状況でも、安定した通信を維持しやすくなっています。
オプションでNTTドコモとソフトバンク回線のデュアルSIMにも対応しており、一方のキャリアがダウンしても、もう一方で通信を継続できる冗長性を備えている点も大きな強みです。
リアルタイムでの写真・動画共有が可能な「ハザードビュー」やGPS位置情報管理はもちろん、特許取得済みの緊急災害情報サービス「DEWS」により、ピンポイントな災害情報を受信できます。
Android OSを搭載したスマートフォンタイプの端末であり、通常の電話回線への発着信も可能なため、普段使いも可能です。
MCAアドバンスやデジタルMCA、サービス終了が予定されている衛星電話の代替としても推奨されており、自治体や企業のBCP担当者にとって検討に値するIP無線機といえるでしょう。
IP510H
「IP510H」はアイコム社が提供するIP500シリーズの後継機にあたり、LTE回線と無線LANの両方に対応したハイブリッドタイプのIP無線機です。
本機種のメリットは、通信経路の柔軟性にあります。LTE圏内では携帯電話網を利用し、LTEが不安定な屋内や地下などでは無線LANへの自動切り替えで通信を継続できます。屋外から屋内へ移動する際など、IP500シリーズよりもシームレスな通信が可能となり、利便性が大幅に向上しました。
充電端子にはUSB Type-Cを採用し、モバイルバッテリーなどでの充電も容易です。充電中でも電源を切らずにバッテリー交換が可能なため、起動時間を待つストレスも軽減されています。
アイコム製IP無線機の特長である同時通話や割り込み通話機能も搭載しており、相手が話し終わるのを待たずにコミュニケーションが可能です。デメリットとしては、無線LANのみで利用する場合でもSIM契約が必要な点が挙げられます。
IC-SAT100
「IC-SAT100」は、アイコム社が提供する衛星無線機です。携帯基地局やMCA中継局が利用できない状況でも、地球上のほぼ全域をカバーするイリジウム社の衛星ネットワークを介して、安定した音声通信を実現します。
送信ボタンを押すだけで、設定したグループ内の複数人に一斉に音声を送信できるのが大きな特徴であり、緊急時でも迅速な情報共有が可能です。
静止衛星を利用するシステムと比較して音声遅延が少ないメリットもありますが、衛星との通信を確保するため、空が開けた屋外での利用が基本となります。また、専用の端末と通信プランの契約が必要なため、利用コストが高額になりやすい点は留意してください。
災害時など、通常インフラが使用不可能な状況でも通信手段を確保しなければならない自治体などに、おすすめの機種です。
まとめ
MCA無線のサービス終了は、代替手段を検討する企業や自治体にとって重要な課題です。
サービス終了までにはまだ時間がありますが、代替システムの選定、導入準備、従業員への周知や訓練には相応の期間が必要です。BCP対策の観点からも、早期に情報収集を開始し、計画的に移行手続きを進めていきましょう。
もしも「どの代替機が自社に最適かわからない」「導入後のサポート体制が心配」といったお悩みがございましたら、ジャパンエニックスにご相談ください。豊富な導入実績と業界トップクラスの製品知識をもとに、お客様の状況やご要望を丁寧にヒアリングし、最適な機種選定、導入後のメンテナンスまで、一貫して支援いたします。
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